- 2021/03/12 掲載
アングル:バブルと引き締め懸念する中国投資家、割安株を物色
こうした流れを受けて、インターネットサービス大手の騰訊控股(テンセント・ホールディングス)や電子商取引プラットフォーム運営の美団など、割高な銘柄から資金が流出。中国の大衆消費社会化で人気が高まった貴州芽台(マオタイ)の株価は2月18日の高値から25%も下げた。
テンセントや電子商取引大手アリババ・グループなど、香港上場の大手ハイテク銘柄で構成されるハンセンテック指数は8日、6%余りも下落。2週間前に付けた高値から27%下げた。
北京のヘッジファンドマネジャー、ドン・バオゼン氏は、ハイテク株や消費関連株の急激な下げについて「バブルがはじけている」と指摘。高値で推移していた株式市場の「キラー(殺し屋)」はインフレや信用収縮に対する懸念だと述べた。
一方、銀行株や不人気な小型株、景気回復による恩恵が最も大きいエネルギーなどのセクターは、資金にとって避難場所となる兆しが表れている。投資家は以前、新型コロナウイルス流行に絡む不良債権への懸念から銀行株を避けていた。ハイテク株の急落と対照的に、金融株は比較的堅調で、小型株指数はほぼ横ばいだ。
成長株はこの数週間、インフレに対する警戒感の高まりから、世界的に売り込まれている。さらに中国では、当局が新型コロナ対応のための景気刺激策の縮小を狙っているとの不安が広がり、成長株は狼狽売りに近い状態となった。
今月開幕した全国人民代表大会(全人代)で示された今年の成長率目標は6%超で、市場予想に届かなかった。
シティ・プライベート・バンクのアナリストチームは8日の顧客向けノートで、政府の控えめな成長目標について「政策当局者が株式と不動産の両方で資産バブルリスクの抑制に動く余地を作ったかのようだ」と分析した。
加えて、中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)の郭樹清主席は先に、中国の非金融株は世界で最も割高だと述べ、市場にタカ派的なメッセージを送った。
最近の株価下落後で見ても、貴州芽台株の過去の利益に基づくPER(株価収益率)は55倍で、テンセントは45倍で取引されている。
シティは「中国の政策は依然として株式市場への影響力が非常に大きい」との理由から、高いバリュエーションと政府政策の方向性の組み合わせは「国内株式市場にとって非常に意味がある」と指摘。主要株価指数はさらに10%下落すると予想した。2月18日に過去最高値を付けた同指数はその後14%下げている。
<埋もれた宝石>
主に中国に投資する資産運用会社シンタイ・キャピタルのミシェル・レオン最高経営責任者(CEO)は、中国の大型ハイテク株と大型消費関連株のバブルは、中国が新型コロナの世界的流行から回復し、海外の投資家が中国向け投資に殺到したことが一因と指摘した。「素早く中国に投資するなら、大型消費関連株に連動する上場投資信託(ETF)への投資を増やすのが手っ取り早い方法」で、そのために貴州芽台やアリババ、テンセントに資金が集まったと述べた。
資金が集中している銘柄はなおもPERが60倍かそれ以上もあり、「もはやまったく筋が通らない」状態だという。
レオン氏のファンドは過去3年間にわたりMSCI中国指数を年20%程度上回る成績を残しており、ほとんどの投資家がモメンタム投資に走っている時は「埋もれた宝石」に買いを入れる戦略が有効だということを証明している。
レオン氏のポートフォリオには電動二輪のヤディア・グループ・ホールディングス(雅迪集団)、エー・リビング・スマート・シティ・サービス(雅生活智慧城市務)などが含まれており、両社のPERはそれぞれ8倍と11倍だ。
ボントベルのクオリティー・グロース・ブティックのポートフォリオマネジャー、ブライアン・バンズマ氏は、コネクテッド電気自動車(EV)設計のニオや美団は、バブル期にあるとしても株価が明らかに割高なため、業績が景気動向に左右されにくいディフェンシブ銘柄に資金を移しているという。
マイノリティー・アセット・マネジメントの創設者、リアム・ツォウ氏は、銀行株を買い推奨した。セクター全体が割安であり、政府のデレバレッジ(負債圧縮)の取り組みでリスクが縮小するとの理由からだ。
中国の銀行株は長期にわたり出遅れていたが、この数週間で3年ぶりの高値に回復した。しかしそれでも純資産に対して平均30%割安な水準で取引されている。
(Samuel Shen記者、Andrew Galbraith記者)
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