• 2021/03/16 掲載

アングル:「中古」に賭けるハーレー、認証制度は吉と出るか

ロイター

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Rajesh Kumar Singh

[シカゴ 8日 ロイター] - 若い世代に新車のオートバイを買ってもらう最善の方法は、まず中古のオートバイを売りつけることである――これがハーレーダビッドソン(H-D)の決断だ。

ミルウォーキーに本社を置く高級モーターサイクルメーカーの同社は、「HーD認証」と称する中古バイク販売制度を展開する計画を立てている。整備状態の良い中古車を自社が認証し、利益率の低い「エントリーレベル」の新車に代わるものとして販売網の中に位置付けるという。自動車業界ではすでに各メーカーが何年も続けてきた戦略だ。

中古バイクに注力する作戦は、ヨッヘン・ツァイツ最高経営責任者(CEO)が進める新たな業績回復5カ年戦略の一環であり、中年世代が中心の富裕層ライダー以外にもブランド訴求を拡大していこうという最新の取り組みである。

米国のブランドとして118年の歴史を誇るハーレーは、6年にわたり小売販売が低下するなかで米国市場でのシェアを着実に減らしてきた。

とはいえ、新車ほど値段が張らない中古のハーレーに対する需要は依然として高い。一部のディーラーがロイターに語ったところでは、昨年は新車よりも中古の方が3倍も多く売れたという。

カリフォルニア州フレスノでハーレーのディーラーを経営するメリッサ・ウォルターズ氏によれば、新型コロナウイルスによるパンデミックを機に屋外でのレクリエーション活動への需要が増大しているにもかかわらず、ディーラーでは顧客に販売するバイクを確保するのに苦労しているという。

「みな、ステイホームに飽き飽きしている」とウォルターズ氏は言う。「外に出て何かやりたがっている」

6つの州にわたる10数社のディーラーでも、似たような印象を抱いている。

自動車産業を専門とするコンサルタント企業JDパワーのデータによれば、昨年、中古大型バイク市場で最も人気が高かったのはハーレーである。それだけに、HーD認証制度が新たな顧客を惹きつける可能性はさらに高まる。

ハーレーから見れば、この認証制度は、利益率の低下につながりやすい低価格の車種を新たに設計・製造する必要なしに、ブランド・ロイヤルティを構築し、新たな顧客を惹きつける方法になる。

「この制度はハーレー・ダビッドソンの魅力を高め、売上高と利益率を増大させ、成長を支える一方で、全体としての顧客体験を高めてくれると信じている」とツァイツCEOはロイターに語った。

中古バイク認証制度は先月発表された。対象になるのは、製造から5年以内、走行距離2万5000マイル(4万234キロ)以下のバイクだ。他の中古ハーレーとは異なり、認証を受けるバイクは検査済みで12カ月限定の保証がつき、同社の金融部門によるローンも利用可能である。

ハーレーはすでに英国で同じような制度を導入しているが、同社にとって最大の市場である米国で中古市場に参入するのは初めてだ。

同社がロイターに語ったところでは、認証制度は4月末にスタートする予定で、これまでに300以上のディーラーが参加する意欲を見せているという。

認証制度に参加する予定のインディアナ州のディーラーでマーケティング・コーディネーターを務めるブラッド・コン氏は、「新しいライダーを惹きつけ、(略)彼らにハーレー・ダビッドソンの世界への入口を提供することになるだろう」と語る。

<新たな収益源としての可能性>

JDパワーによれば、自動車産業では、これに似た制度によってディーラーの利益が増大し、在庫回転率も上がっている。JDパワーのデータからは、こうした制度がブランド・ロイヤルティを育むうえでも効果が高く、自動車購入代金を融資するメーカーの金融部門にとっても、より多くのビジネスをもたらす傾向があることが窺われる。

ウェドブッシュ・セキュリティーズでアナリストを務めるジェームス・ハーディマン氏は、中古バイク市場は過去10年間で大きなビジネスに育っており、ハーレーにとっても「かなり大きな」収益源になる可能性があると語る。

2017年、オンライン中古車販売のランブルオンでは、米国の中古バイク市場の規模を年間75億ドルと見積もり、売上高の半分以上はハーレー製としている。またこの調査では、18─34歳の顧客が購入する「ホグ(ハーレー製バイクの愛称)」のうち、中古車は新車の3倍だという。

<最大のライバルは自社製中古バイク>

今までは、中古ハーレーに対する需要の拡大は、米国小売市場におけるハーレー・ダビッドソンにとって足枷となっていた。2014年以来、同社の売上高は40%近く減少している。

ハーレー製バイクはそう簡単に老朽化せず、時代遅れにもならないから、高価格なニューモデルよりも中古ハーレーに対する需要の方が大きくなる傾向がある。

ツァイツCEOはこの1年、新車の供給を絞ることで問題に対応しようと試みてきた。新車の在庫が乏しくなったため、アウトドアスポーツへの需要拡大と相まって、中古バイクの価格は上昇した。

それでも、同社の試算では、米国内では300万台の中古ハーレーが市場に出回っており、同社が昨年出荷した新車約8万台を大幅に上回っている。

「ハーレー・ダビッドソンの新車にとって最大のライバルは、インディアンやホンダ、あるいはスズキのバイクではない。中古のハーレーなのだ」とハーディマン氏は言う。

自動車メーカー各社は1990年代に同様の問題に直面し、中古車認証制度を立ち上げて、初めて自動車を購入する人や予算の制約がある顧客に向け、リースから返却された何千台もの自社製中古車を販売した。

この制度のおかげで、各社は利益率が極めて小さい低価格のエントリー車種を廃止し、もっと収益性の高い製品のためにリソースを投じられるようになった。

ハーレーも同じ目標をめざしている。すでに低価格なエントリーレベルの車種をいくつか廃止し、利益の点で主力となっているツーリングバイク、大型クルーザーバイク、トライクバイクといったセグメントへの投資を強化する予定だ。

また、認証バイク制度を活かして、アクセサリーや同社ブランドを付した一般製品などの周辺製品、金融サービスによる売上高を増大させたいとしている。

モーターサイクル・グローバルの創業者兼主任コンサルタントのマイケル・ユーラリック氏は、認証中古車制度について、新車の供給を絞ることによって失われた収益を取り返すことを狙ったものだと考えている。

ハーレーが米国内のディーラー向けに出荷するバイクの台数は、2008年の20万6000台に比べ、60%以上も減少している。

ユーラリック氏は、「今後、年間20万台という規模には戻らないだろう」と語る。「失われた収益をどこかで取り戻さなければならない」

(翻訳:エァクレーレン)

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