- 2006/09/22 掲載
【2007年問題】深刻さを増すIT技術者不足。解決策はあるのか?
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団塊の世代が一斉退職する2007年問題は IT業界にも深刻な影響を及ぼす |
総務省の試算によると、現在不足しているIT技術者でも42万人にのぼる。中でもセキュリティ技術者は12万人も不足している。2007年問題を控え、緊急性が高い割には研修のための教材などが未整備で、育成が進んでいないのが実情だ。
2005年に施行された個人情報保護法以降、Winnyをはじめとする情報漏えい事件がクローズアップされることが多発。各企業ではセキュリティに対する見方が一変した。
各ユーザー企業でも自社のシステムを立ち上げる人間や、セキュリティを啓蒙できる人材の確保を狙うが、ある大手食品業界の採用担当者は「(食品業界で)IT部門担当者を募集しても人が集まらない」と嘆く。IT技術者もまた、畑違いの各種ユーザー企業が人材を募集していることを知らないことも多く、IT技術者の行きたい企業は、IBMやNTT、マイクロソフトといった大手IT系ベンダーが上位を独占している状況だ。
そこで昨今多く行われているのがIT技術者のアウトソーシングである。IT技術者が各ユーザー企業に派遣され、その企業のシステムを常時見張るほか、各種システム要件に応える、いわばITの「ご用聞き」の役割を担う。
こうした中、セキュリティ技術者の需要を見込んで、正社員資格と報奨金を付けた無償セミナーを開講するセキュリティベンダーも現れた。
コンピュータセキュリティ関連製品を扱うセキュアヴェイルは9月20日、1ヶ月間かけてセキュリティ専門の技術者を養成する教育センターを開設。ここで開講されるセキュリティ専門セミナーの参加費は無料のほか、最高15万円の報奨金が支払われ、同社での正社員保証も行う。
このセミナーは、セキュリティ専門企業として培ってきた同社の社内技術者育成のカリキュラムを用いて行われるもの。無料でも広くコンピュータセキュリティの専門知識を広めることで、IT技術者の育成・セキュリティ意識の向上を図る。
同社の広報担当者は「一種の社会貢献。業界の底上げを行いたい」と語る。志望者は、まず受講適格確認テストを受けた後、「セキュリティエンジニア集中養成セミナー」を受講し、第1クールから第3クールまでのカリキュラムの終了ごとに進級試験をうける。各クールの合格者のみが次クールへ進級でき、各クール合格後、受講生に対して5万円の報奨金が支給され、最大15万円が手に入る。また、卒業後はセキュアヴェイルの正社員としての採用を保証されるが、これは強制的なものではない。
このセミナーを実施することで、セキュアヴェイルは自社のセキュリティ技術者を確保する狙いがある。頭数を揃えることで、これまでネットワークを通じてリモートサービスの形で請け負ってきたコンピュータセキュリティの監視・運用サービスに加えて、将来的にはセキュリティ技術者を企業に常駐させることで、自社内にて監視・運用を行いたい企業に対してもサービスを広げていく見込みだ。
前述のセキュアヴェイルをはじめとするIT技術者の人材派遣は、確かに人材不足に悩むユーザー企業にとって有効かつ魅力的な手段のひとつである。
とはいえ、多くの企業がIT部門に湯水のごとく投資を行えるわけではないはずだ。一時的にアウトソースに頼ることはあっても、自社にそのノウハウが蓄積されなければ費用はかさむ一方となる。人材をゼロから自社で育成するにしても、いつどのような形でその人間がいなくなるとも限らない。ITのノウハウをどういう形で蓄積していくのか、どのような選択をするにしてもこの点は勘案する必要があるだろう。
費用を抑えるという観点で考えると、各都道府県で実施されている企業のIT化を目的とした融資制度やIT投資促進を目的とした特別償却や税額控除といった官公庁の助成制度を利用するのも1つの手だ。東京都では「特定取組支援融資」、千葉県では「中小企業活性化支援資金」、静岡県では「IT化サポート貸付」と各都道府県ごとに名を変えて用意されているので注意が必要だ。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)といったIT系政府関係機関も各種債務保証付き無担保融資などを行っている。
また、全国で実施されている無料のセミナーを利用することでも自社担当者のITスキルアップを行える。ITベンダーに言われるがままの投資を行うのではなく、せめて対等な立場で会話できる知識水準を身に付けることは大幅なITの導入・保守コストを抑えることにつながるだろう。
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