合同会社 関西商魂 代表 中森勇人

　 　食品メーカーの不祥事が相次いでいる。そのきっかけとなったのは老舗洋菓子店の不二家だ。昨年11月ごろに発覚していた消費期限切れ牛乳の使用や食中毒に関する情報開示をしていなかったということが主な要因。記者発表を遅らせたのは牛肉偽装事件で解散した雪印食品のようにならないため。クリスマスシーズンのケーキの売り上げも捨てがたく、なるべく被害を少なくしたいという気持ちが働いたものと考えられる。

　しかし、隠していたのは消費期限切れ問題だけでなく、業績の悪化もあったようだ。すでに不二家レストランは、みずほ証券系ファンドと設立する新会社に譲渡されることが決定している。不二家レストランは家族向けレストランで、昭和53年に郊外型1号店を開店。現在は、全国に97店を展開しているが、既存店の客数は減少を続け、収益が悪化していたという。
　残るは全国で約800店舗を展開する不二家洋菓子店。こちらは引き続き不二家本体が運営することになるのだが、イメージダウンは大きく、このままではレストラン部門の二の舞になりかねない。再建にはウルトラC級の技を繰り出さないと難しいだろう。


ペコちゃん人気に注目

　不二家と聞いて思い浮かべるのはなんと言ってもペコちゃんだろう。このキャラクターが登場したのは昭和25年で半世紀以上の歴史を持つ。ペコの由来は子牛の「べこ」を西洋風にアレンジしたもの。ちなみにペコちゃんの相棒の「ポコ」は室町時代の幼児の呼び名「ぼこ」からだと言われている。
　ペコちゃんの年齢は6歳で身長は100cm。昭和27年に「ミルキーはママの味」のキャッチコピーで有名なミルキーが発売されるや否や国民的な人気者になった。

　さて、このペコちゃんなのだが、数多くのキャラクターグッズがリリースされている。首振り人形をはじめ、ハンカチや携帯のストラップ、マグカップなど。洋菓子店ではペコちゃんファミリークラブに入りポイントを集めるとオリジナルグッズももらえるという。これは500円ごとの買い物につきポイントが1コもらえ、20ポイントでカ－ドが1枚。枚数に応じペコちゃんのオリジナルグッズがプレゼントされるというもの。

　もらえるグッズは１枚でミニフィギュア、3枚で「モダンなペコちゃん」の人形、5枚で親子パジャマ、10枚で「ペコポコハッピードライブ」というもの。
　ペコポコハッピードライブはペコちゃんポコちゃんが真っ赤なスポーツカーに乗っているという何の変哲もない置物なのだが、オークションサイトを見ると3～4万円という高値で売買されている。たかがオマケの景品にこの値段。非売品ということでプレミアがついたということが言える。中には景品ほしさにケーキを買うという人もいるくらいだ。


舌を出した救世主

　プレミアがついているペコちゃんグッズなのだが、さらに高値で取り引きされているのが、不二家の店頭に置かれているペコちゃん人形。専門店やオークションサイトでは20万円近い値段で取り引きされている。
　この影響からか、昨年1年間で店舗から盗まれたペコちゃんは10体以上。中には店内の金庫には手を付けず、重さ15kgの人形だけを盗むという事件もあったという。
　これほどの人気者の力を使わない手はないというもの。何せ1体20万円もするのだから、5,000体も売れば10億円になる。1個数百円の菓子を売ることに比べると儲けは計り知れない。

　しかし、量産をかけてしまえばプレミアが失われることは必至。そこで、考えられるのが「社内調査で出てきた店舗用のペコちゃん人形（希少）」という触れ込みで少しずつ、ネットオークションに流すという方法。この手を使えばペコちゃんが不二家の再建に多少なりとも救世主になることは間違いない。もちろん、してやったりとペロリと舌を出しながら。