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  • 【多根清史氏インタビュー】日本の産業や文化に巨大なインパクトを与えたゲーム機たち

  • 2008/10/01 掲載

【多根清史氏インタビュー】日本の産業や文化に巨大なインパクトを与えたゲーム機たち

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世界的に注目を集めているものの、ややもすればその存在を子どもの遊びだとばかりに過小評価されることも多いゲーム。実際に、日本におけるゲームはどのように生まれ、文化や産業にどれだけの影響を与えてきたのだろうか――。刊行されたばかりの『日本を変えた10大ゲーム機』(ソフトバンク新書)で、ゲーム機の歴史を丹念に追った多根清史氏にお話をうかがった。

勝負師として優れていた山内溥と久夛良木健


――今回『日本を変えた10大ゲーム機』という新書を上梓されたわけですが、企画の発想の元というのはどのあたりだったんでしょうか?

多根氏■
ゲームって非常に過小評価されているものだと思うんです。ゲームのビジネス単体で語られることはあっても、あくまでもサブカルチャーとして片付けられている。ゲームは子どものおもちゃだから、ということですね。でも、そうではないんじゃないかと思ったんです。これだけ広く遊ばれているのだから、当然そこには子どもたちへの影響もあるし、思想への影響もある。ひいては産業から生まれたゲーム機が日本のメインカルチャー、さらには基幹産業に対してフィードバックが大きいのは当然である、と。でも、そのあたりが語られていなかったことに不満があったわけです。

 ゲームビジネスの中、つまり非常に狭い閉じたサークルの中のものとしては語られてきましたが、そこからもう一歩進んで、たとえば、おもちゃ業界や子ども文化にどう関わってきたか、雑誌文化とのリンケージはどうだったのか、そういうことは全然語られてきていない。高橋名人なんかも、ある種“過去の人”みたいな扱いでしか語られていないんですけど、本当は子ども(文化)と大人(文化)を最初につなげた重要な人物なんです。ゲームを語るうえで、そういう視点が今までは欠けていた。それが本書を執筆するうえでの動機のひとつになっています。

――今回、10の家庭用ゲーム機を主に取り上げているわけですが、これはどういった理由なのでしょう?

多根氏■
10ってけっこう多いですよね(笑)。最初の構想ではファミコンとプレステだけだったんです。この2つは間違いなく、日本のゲーム業界だけでなく日本の文化のある部分を形作ってきた。でも、ファミコンやプレステが単品で成立したのかというとそうではない。他のゲーム機とチップの開発についての切磋琢磨もあったし、インスパイアされている部分もある。となると、家庭用ゲーム機の系譜をたどっていくことがゲーム文化やゲーム産業を語るにあたって欠かせないことであり、より正確にそれをたどるためにも最初ふたつだった点の数を10にしたんです。
【コラム】【多根清史氏インタビュー】日本の産業や文化に巨大なインパクトを与えたゲーム機たち
『日本を変えた10大ゲーム機』

――これだけ経済効果もあって、産業や文化に影響を与えているホビーは他にないでしょうね。

多根氏■
新しい媒体が必要な娯楽って、それまでなかったじゃないですか。カルタにしてもカードにしても、言ってしまえばすべて紙媒体だった。それに対してゲーム機は常に新しいメディアと一緒に歩んできている。ROMカートリッジ、CD-ROM、今はブルーレイですね。まだうまく使えてませんけど(笑)。ゲーム機は日本の素材産業の立ち上げに貢献していますし、素材産業が供給過剰になってしまったときは引き受け先にもなっているんです。

――ファミコンとプレステのお話が出ましたが、この2つを世に送り出した任天堂の山内溥(ひろし)前社長とSCEの久夛良木(くたらぎ)健前社長は家庭用ゲーム機の歴史において非常に重要な人物だということがよくわかりました。ふたりに共通する点はどんなところでしょうか?

多根氏■
勝負師としての勘が非常に優れていますよね。このときにしかない!というタイミングで市場に殴り込みをかけている。ただ、その前にふたりとも数多くの失敗を繰り返してきているんです。

――本書の中で多根さんは山内さんのことを「やぶれかぶれ」とも評されていますが(笑)、ただ経営者としては非常に合理的でもあるんですよね。新しいチャレンジをしつつも、絶対に定価は1万円を切るように指示を出すとか。

多根氏■
小さな失敗を重ねているんだけど、その積み重ねのうえで大きな投資もしているんです。山内さん本人は否定されていますけど、ファミコンのチップを作っていたリコーに2年で300万個発注する約束をした、とか。久夛良木さんにしても、PS2のために1,200億円かけて半導体の工場を作ってしまう、とか。勝負をするときは賭けチップをケチらないのがこの2人の特徴であり、共通点でしょうね。そのときどきのTPOに応じたゲーム機を出せば勝てるにもかかわらず、そこに一点投資をする経営者がいなかったんです。

プレステの前に3DOというゲーム機があったんですが、あれがうまくいかなかったのは勝負に出るべきときに出なかったからです。いろいろなところでケチってるんですよ(笑)。家庭用ゲーム機は数百万台の市場があるので、損して得とれ、みたいなところもあるのですが、3DOはそれをしなかった。発売前に7万円を超えるような定価設定にしようとしたりと、ちょっと腰が引けてしまっていたんです。

――勝負をかけるときは必ず低価格を守る、というのが任天堂のやり方ですよね。

多根氏■
家庭用ゲーム機の世界は、相手の出方を見つつそれにあわせて逐次パワーアップしていてもだめなんです。戦力の逐次投入って、戦争においても負けパターンじゃないですか(笑)。それを繰り返していたのがセガなんですけど(笑)。

――本当にこの本の中でのセガはいい脇役というか、影の主役ともいわれてますよね(笑)。ほとんど出ずっぱりの活躍で。

多根氏■
人間がいろいろな獣との戦いのうえで石器や武器を得て進化していったように、任天堂や他の勝ち組ゲーム機もセガとの戦いによって進化していったんです(笑)。

――「バーチャファイター」なんかもそうですよね。技術では先行していたのにプレステにいいところを持っていかれてしまった。

多根氏■
プレステはそれまでの家庭用ゲーム機とは違ってすぐれた3Dポリゴンの再生技術をもっているハードだったのですが、ソニーはなぜ今、3Dポリゴンが必要なのか各ゲームメーカーを説得する言葉を持っていなかったんですよ。それが「バーチャファイター」のアーケードでの大ヒットによって、たまたまセガが説得の材料を提供してしまった(笑)。これ以降、大手ゲームメーカーがどんどんPSに参入してきてポリゴンを使ったゲームを作りはじめたんです。「バーチャファイター」は完全にプレステにとって追い風だったわけですね。

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