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  • 2014/04/02 掲載

新野淳一氏xブロケード小宮崇博氏:SDNとSDSの関係は?IoT時代のインフラの要件を探る

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「ビジネスの成功と失敗の振れ幅が特に大きくなっている」と語るのは、Publickey 編集長の新野淳一氏だ。たとえばLINEのように爆発的な成長を見せるビジネスもあれば、多大な投資にもかかわらず、失敗する例は後を絶たない。そして、こうしたビジネスの変化やスピードに、ITインフラが追いつかないというケースも増えてきた。ブロケード コミュニケーションズ システムズの小宮崇博氏は「従来のROI重視の投資手法では限界が出てきている」と指摘する。Internet of Things(IoT)・ビッグデータ・クラウド時代のITインフラはどうあるべきなのか、そしてその解決の糸口となるキーワード「ファブリック」とは何か。新野氏と小宮氏が語り合った。
(聞き手は編集部 松尾)

サイジングが困難な時代だからこそ求められるITインフラの柔軟性

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Publickey
編集長 / Blogger in Chief
新野 淳一 氏
──現在、ITインフラに対するニーズが、より高まっているように思います。その背景をどのようにご覧になっていますか。

新野氏:ビジネスを始めるとき、成功するか失敗するかは、もちろん分かりません。しかし、最近は成功と失敗の振れ幅が特に大きくなっているようです。成功すれば、たとえばLINEのように爆発的に成長する一方、大きな初期投資をしたものの、泣かず飛ばすといった例はいくらでもあります。したがって、ビジネスのITインフラをサイジングすることが、非常に難しい時代だと言えます。これがいま、インフラの柔軟性、スケーラビリティが求められている大きな背景だと思います。

小宮氏:今後、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の時代が本格化すると、位置、温度・湿度、気圧……等々の膨大なデータが集まってきます。当然、これらのデータを処理するわけですが、現実には、データの保存だけでも非常に大きなインフラが必要です。それがどれくらいの規模になるか、事前に予想するのは非常に難しい。となると、従来のROI重視の投資手法では限界が出てきます。そこをカバーするために、さまざまな技術が出てきているのですが、その要となるものの1つにネットワークがあります。我々が扱っている「ファブリック」も、まさにこうした課題を解決する技術です。

新野氏:もともと、イーサネットはスケールアウトが難しい技術でした。以前は、あるネットワークのラインを1Gと決めたら、2本で2G、3本で3Gとはならず、10Gに変更したければ、1Gを10Gに入れ替えなければならなかったのです。ところが、ファブリックのような技術が出てきて、2本並べて2倍、3本並べて3倍にする、スケールアウトさせることが可能になりました。これは、ネットワーク、そしてデータセンターにとってとても大きい変化です。

小宮氏:ファイバーチャネルからスタートしているブロケードとしては、実は当たり前のことでしたが、イーサネットの世界では確かに革新的でした。さらにいえば、いままで1Gだったネットワークが、ライセンスを追加したら10Gになったり、必要なときだけ10Gになって、必要がなければ1Gに戻るといった柔軟性もあってよいと思います。ところが、いまのデータセンターには、それはありません。ブロケードとしては今後、そういうところを変えていく必要があると考えています。

ITインフラに求められる柔軟性とSDN、ファブリックの関係

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ブロケード コミュニケーションズ システムズ
Cloud Technology Officer
小宮 崇博 氏
──こうした動きとSDN(Software-Defined Networking)には、どのような関係があるのでしょうか。

新野氏:SDNとは大いに関係があります。サーバを仮想化すると、物理サーバの間で仮想サーバを動かせます。

 したがって、仮想サーバをより高スペックな物理サーバに移動すれば、中身は同じでも、より高性能な環境をすぐに利用できます。しかし、それを実現するには、ネットワークを通じて仮想サーバを別のサーバに移動しなければなりません。そのためにも高速なネットワークで、かつサーバ間のネットワークを柔軟なものにしなければならなくなったのです。

 そこで、ネットワークそのものをプログラミングするという発想が出てきました。ネットワークの形や機能をプログラミングできればいろいろと便利そうだ、というわけです。これがSDNです。同様にして、仮想ストレージに関しても、SDS(Software-Defined Storage)という考え方が出てきています。

 ただし、仮想サーバにしても、仮想ストレージにしても、その間をつないでいるのはネットワークです。これらを柔軟に利用するほどに、そのデータを運ぶネットワークがボトルネックになってきました。

 これまでのアプリケーションはほぼ物理サーバ内に閉じていたので、ボトルネックはメモリやストレージでしたが、仮想サーバや仮想ストレージの登場によって、サーバやストレージが仮想的にネットワークをまたがって自由に拡張できるようになると、次のボトルネックがネットワークになってきたのです。そこで、ネットワークのスケールアウトを可能にするファブリックのような技術へのニーズが、どんどん高まっているのだと思います。

小宮氏:ネットワークのスケールアウトに加えて、いまはNFV(Network Functions Virtualization)にも注目が集まっています。これは、ルータ、サーバ、ロードバランサ、ファイアウォールといったネットワークの機能を仮想アプライアンスとしてネットワークにアタッチし、動的に変化させる技術です。

 ストレージについても、同じことが言えます。ファイルサービス、暗号化サービス、コンテンツインスペクション、デデュプリケーション(重複排除)といったストレージ機能を仮想アプライアンス化してネットワークにつなぎ、クライアントにストレージサービスを提供すれば、必要な機能を柔軟に追加したり削除したりできるようになります。やはりここでもネットワークは大きな意味を持つことになります。

フラッシュによるストレージ高速化とそれを活かすファブリック技術

──フラッシュ技術によるストレージの高速化がもたらしたインパクトについては、どう評価されていますか。

新野氏:フラッシュでストレージを高速化したら、いままで顕在化しなかったプロセッサやネットワークのボトルネックが顕在化して高速なフラッシュストレージのパフォーマンスを十分に発揮できなかったという話を聞くようになりました。

小宮氏:フラッシュを使うと、ストレージの速度は100倍速くなります。これまで、いきなり速度が100倍になったテクノロジーは、ほとんどありません。2~3倍もしくは10倍はありましたが、いきなり100倍になると、世の中を変えるほどの大きなインパクトがあります。

 しかし、その速度を活かすためには、ネットワークが重要です。帯域幅を動的に変えられて低遅延なネットワークがあってはじめて、フラッシュが活きるのです。ブロケードの「ファイバーチャネルファブリック」「イーサネットファブリック」は、まさにそうした技術です。

新野氏:これまで、大きいシステムにおいては、サーバから出て行くイーサネットのネットワークとサーバとストレージをつなぐストレージネットワークは別々でした。この傾向は今後も続くとは思いますが、長期的には1つの統合されたネットワークになっていくと思います。その意味では、イーサネット系とストレージ系の両方のテクノロジーを持っているブロケードさんは、面白い立ち位置にいると思います。

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ファブリック技術でデータセンターやエンタープライズコンピューティングの革新を

──フラッシュやファブリックなどの技術がデータセンターやエンタープライズレベルのコンピューティングシステムにもたらすメリットは何でしょうか。

新野氏:まず前提として、ストレージやコンピュータ系のネットワークが全部入ると、複雑度が非常に増します。すると、テクノロジーをシンプルに保ったり、可視性を担保することがとても重要になります。スケーラビリティやレイテンシー、帯域幅はもちろん重要ですが、故障したときにその場所や原因が分かり、すぐに対処できるようにならなければ、ネットワークとして機能しません。

小宮氏:何かトラブルが発生したとき、トラブルの発生箇所や原因を特定できるのは最低ラインだと思います。重要なのは、どう対処すべきかも含めてレコメンドする、もしくは自動的に修復してしまうことです。夢のような話かもしれませんが、次世代のデータセンターでは、それが要求されるでしょう。そこで必要になるのが、コンピューティングリソース、ネットワークリソースなどを動的に切り出して、アプリケーションを動かす仕組みです。それが「Software-Defined xxx」なのだと思います。

──なるほど。そのために、ブロケードとしては、ユーザーに対して、どういった支援が可能であると考えていますか。

小宮氏:低コストで汎用的な技術でITが作られるようになり、多様なデータが高密度でデータセンターに集まる時代になっています。加えて、どれくらい投資したら、どれくらい儲かるかが読みづらい時代でもあります。こうした状況で必要になっているのが、スケールアウトの技術です。

 さらに、日本のデータセンターが“Over The Top”と呼ばれるグーグル、フェイスブック、アマゾン、アップルなどのインターネットの上位レイヤーのプレイヤーと差別化していくには、リアルタイム性が必要になってきています。

 また、最近はスキルがそれほど高くなくても運用できる自動化ツールを使った垂直統合モデルが出てきましたが、この運用ノウハウをデータセンターに広げたり、運用そのものをソフトウェアで自動化したりすることによって、はじめてデータセンターは、Over The Topのプレイヤーと差別化していけるのだと思います。ファブリックは、ネットワークの設定も構築も、変更も管理も、ひいてはトラブル発生時の修復までをも徹底的に自動化して、運用をシンプルにする“ゼロタッチ”ネットワークの実現を目指した技術です。

 ですから、ぜひ多くのユーザーに「ファブリック」という技術を使っていただき、ネットワークに手間をかけることなくデータセンターや企業のコンピューティングシステムを革新して、より付加価値の高いビジネスをしていただきたいというのが、我々のメッセージになります。

ビッグデータ、IoTのビジネスからフラッシュやファブリックの最新技術までをまとめて紹介

──最後に、4月18日に開催されるブロケード コミュニケーションズ システムズ主催の「ストレージ+フォーラム2014」について、見所を教えていただけますか。

新野氏:ストレージをフラッシュに変えることは、非常に大きいインパクトがあります。小宮さんから100倍という話がありましたが、理論上は1万倍高速になってもおかしくありません。一般的なフラッシュストレージは通常のハードディスクより100倍高速ですが、エンタープライズ用は、さらにその100倍高速な製品もあるからです。

 こうなると、「速くなった」というより「今までできなかったことができる」というレベルです。では、その速度を活かして“できなかったことをやる”ためには、どんな技術があるのか、どんなインフラが必要なのかが、セミナーではまとめて紹介されます。導入を検討されている企業には、とても参考になると思います。

小宮氏:そうですね。世の中を変える技術であるフラッシュ、スケールアウトストレージのような技術も見られますし、基調講演でご登壇いただく喜連川優先生にはビッグデータやIoTとビジネスの話、その次にくるキーワードなどもお話いただく予定です。ストレージ担当者、ネットワーク担当者といった垣根を越えてデータセンター全体のリソース最適化を担っていかなければならない時代に備えて今、知っておくべき非常に多彩な内容をラインナップしているので、期待していただければと思います。

──本日はありがとうございました。

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