- 2022/12/02 掲載
進まぬ価格転嫁、賃上げに壁=苦境の中小企業―連合春闘方針
歴史的な物価高の下で迎える2023年春闘は、中小企業が仕入れコストを販売価格に転嫁して賃上げの原資を確保できるかどうかが成否のカギを握る。連合は1日、賃上げ要求水準を8年ぶりに引き上げ、「5%程度」に設定。値上げラッシュから家計を守る姿勢を鮮明に打ち出したが、中小の価格転嫁は進んでいない。大幅賃上げの実現には大きな壁が立ちはだかっている。
「賃上げの最大の構造問題は適正な価格転嫁が進んでいないことにある」。連合の芳野友子会長は1日の中央委員会で声を張り上げた。労使交渉の本格化をにらみ、価格転嫁を促す全国運動を展開する方針で、「政府は中小企業においても5%程度の賃上げが実現できる環境を整えるべきだ」と訴えた。
中小企業庁が6月に発表した調査で、22.6%の事業者が価格転嫁を全くできていないと回答。コストが増えた分の1~3割程度しか転嫁できていない事業者も22.9%に上った。労働者全体の約7割を抱える中小企業で賃上げが進まなければ暮らしは厳しさを増し、消費が冷え込みかねない。
景気減速を回避したい政府も「構造的な賃上げの実現」の旗を振る。岸田文雄首相は10月、価格転嫁を阻む事業者への監視を強化するため、中企庁や公正取引委員会の大幅増員を表明。経団連も会員企業に実効性のある取り組みを呼び掛ける方針を示している。
23年春闘の行方について、SMBC日興証券の関口直人ジュニアエコノミストが「収益に余力がある大手企業は例年より高い賃上げが可能だ」と分析する一方、経団連の十倉雅和会長は連合の要求水準を「高めのボールだ」とけん制する。中小企業は大手の妥結内容を踏まえて交渉に臨むのが一般的で、物価上昇をカバーできる水準の賃上げがどこまで波及するかは見通せない。
さらに、価格転嫁が進めば値上げの波が一段と広がるジレンマにも陥りかねない。労使双方は例年以上に難しい交渉を迫られている。
【時事通信社】
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