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  • 焦点:米債務上限問題で円高警戒、国内勢のオープン外債投資で抑制も

  • 2023/05/16 掲載

焦点:米債務上限問題で円高警戒、国内勢のオープン外債投資で抑制も

ロイター

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坂口茉莉子

[東京 16日 ロイター] - 外国為替市場では米債務上限問題による円高進行が警戒されている。円は「逃避通貨」としての位置付けが低下したとの見方もあるが、米国債がテクニカル・デフォルト(債務不履行)や格下げになった場合、リスクオフによるドル売り・円買いが強まるとの予想は依然多い。一方、混乱が一服すれば、国内勢のオープン外債投資などによりドル/円は下げ渋る可能性もあるとみられている。

<「嵐の前の静けさ」か>

金融市場は一見、米債務上限問題を楽観視しているようにみえる。交渉の行方を見守っているとも言えるが、米国の株式、国債、ドルは総じてレンジ取引だ。しかし、実際に米国債がテクニカル・デフォルトになった場合や格下げされた場合のインパクトは極めて大きいとみられている。

クレディ・アグリコル銀行の資本市場本部シニア・アドバイザー、斎藤裕司氏は「(米国債が格下げされた)2011年は利下げ局面だったものの、今は利上げ局面で、景気を絞っている最中だ」と指摘。「市場心理がさらに悪化すれば、年内後半の米利下げが視野に入るなど、市場へのインパクトは以前よりも大きい」との見方を示す。

スイスフランとの対比で、円はリスクオフ時の「逃避通貨」としての地位を失いつつあるのではないか、との指摘が多くなっている。しかし、米債務上限問題で金融市場がパニック的な状況に陥るような場合は、リスク回避目的での円買いがやはり起きやすいとの見方が外為市場ではもっぱらだ。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するIMM通貨先物の非商業(投機)部門の取組(5月9日までの週)によると、円は6万1015枚の売り越し。需給的には投機筋の円買い戻しが起きやすい状況だ。

ドル売りと円買いがともに強まれば、「ドル/円は年初に付けた127円台を試す展開となりやすい」と、みずほ銀行のチーフマーケットストラテジスト、鈴木健吾氏は予想する。

<過去も短期的には円高進行>

過去の例でも、少なくとも短期的にはドルは売られやすく、円は買われやすい。

2011年8月に格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が米国債を「トリプルA」から「ダブルAプラス」に1ノッチの格下げを発表した際、政府・日銀による円売り介入で80円台に浮上していたドルは、75円台まで急落した。

18年12月から19年1月にかけて一部政府機関が閉鎖された際は、ドルは111円台から104円台まで下落した。1月初旬に米アップルの株価が急落したことも一因だったが、リスクオフの流れから円がドルよりも選好されている。

米国債は長めの金利が低下する可能性があるとみられている。デフォルトになったとしても、米国に返済能力がないわけではなく、あくまで「テクニカル・デフォルト」であり、債務上限問題は最終的には解決するとみられているためだ。

11年のケースでは混乱一服後、「安全資産」として米国債が選ばれ、米金利は低下した。償還への不安から米財務省短期証券(Tビル)など短めの金利は上昇する可能性があるが、2─5年といった金利が低下すれば、金利面からもドル安・円高を促しやすい。

<円高局面ではオープン外債投資も>

ただ、ドル/円も一方的な下落にはなりにくいとみられている。日本の貿易赤字はピークアウト感が出てきたとはいえ、依然として巨額であり、構造面からの円安要因が残っているためだ。

また円高局面では、国内機関投資家によるオープン外債投資が増加しやすいとみられている。足元ではドルのヘッジコストが高いため、為替ヘッジを付けた外債投資の総利回りは低いが、円高局面では円安に転じれば為替評価益も期待できるため、ヘッジを付けないオープン外債の魅力が高まる。

大和証券のチーフ為替ストラテジスト、多田出健太氏は「足元の米10年債金利水準は相当高いが、ヘッジ付き外債では逆ザヤとなってしまうことを踏まえると、(機関投資家が)オープン外債で入っていくる可能性はある」との見方を示す。国内勢の米国債投資は為替ヘッジを付けなければドル高・円安要因となる。

ロイターが4月に実施した国内生保の2023年度資産運用計画でも、一部の運用担当者からはオープン外債に興味を示す声が聞かれた。

米債務上限問題が長引けば、金融システム不安につながりやすいほか、米景気の下押し要因にもなる。しかし、比較的短期で解決されれば、インフレが高止まりしていることから、米連邦準備理事会(FRB)は大幅な利下げに転じることはないとの予想も多い。

一方、「日銀の金融緩和政策が長く続くという見方から、比較的円安方向にバイアスがかかりやすい」とニッセイ基礎研究所の金融研究部、福本勇樹金融調査室長は指摘する。日銀による大幅政策修正観測は後退しており、日米金利差が縮まりにくいとの見方もドル/円の下支えとなる。

(坂口茉莉子 編集:伊賀大記)

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