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- 2025/07/30 掲載
「ウソだろ?」“昭和の遺物”FAXがまさかの成長……「あの業界」が手放さないワケ
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。
“時代遅れの象徴”が……まさかの年率
「日本だけがFAXを使っている」という言説は、テクノロジー格差を語る際の定番ネタだ。メールやクラウドが当たり前のこの時代に、いまだ役所や企業で「ピーヒョロロロ…」と音を立てて紙を送り合う様子は、たしかに“時代遅れ”に見えるかもしれない。しかし、そんなイメージとは裏腹に、FAX市場は米国で今、堅実に成長している。
米市場調査会社ベリファイド・マーケットリサーチによれば、2023年から2031年にかけて平均年率6.96%で発展し、2023年に26億5,804万ドル(約3,879億円)規模だったのが2031年には45億7,667万ドル(約6,678億円)規模に達するという。なんと今後10年で約1.7倍になる見込みだ(下の図)。
この成長の背景には、“古いけど手放せない”という業界のニーズがある。
「オワコン」じゃなかった、企業のFAX使用率
米eFaxの推計によると、企業の7割がFAXを使用しており、特に政府機関、法律事務所、病院、銀行などでは今も主要な情報伝達手段として現役だ。しかも、市場をけん引しているのは、感熱紙+電話回線の昭和的FAXではない。今の主役は、“アナログの皮をかぶったデジタル”だ。
たとえば、普通紙対応のインクジェット複合機。さらには、PDFなどのデジタル文書をFAX信号に自動変換して送信するサブスクリプション型クラウドFAX、そして受信した紙FAXをデジタル形式に即変換するペーパーレス対応サービスなど、多様な選択肢が共存している。
FAXはもはや「紙のやり取り」ではなく、セキュリティと互換性を両立した次世代ドキュメント・ゲートウェイへと変貌を遂げている。実際、市場の動向もそれを裏付ける。
たとえば、インクジェット複合機のFAX市場は、2023年の2億900万ドル(約305億円)から平均年率3.6%のペースでじわりと成長を続け、2030年には2億7,000万ドル(約394億円)に到達する見込みだ(下の図)。

一方で、本格的な成長を見せているのがクラウドFAXを中心とした「デジタルFAX」市場だ。
米市場調査会社リサーチアンドマーケッツによれば、2024年に33億1,000万ドル(約4,830億円)規模だった同市場は、平均年率5.17%の成長を続け、2030年には44億8,000万ドル(約6,537億円)に達すると予測されている(下の図)。
そして、このデジタルFAXの最前線をリードしているのが「あの業界」であることも注目に値する。 【次ページ】FAXを絶対に手放さない「あの業界」……納得すぎる理由
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