- 2024/09/19 掲載
焦点:FRB利下げは遅すぎたか、市場は米経済の軟着陸に期待
[ニューヨーク 19日 ロイター] - 今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)は近年で最も重要な会合だったが、利下げサイクル開始が景気の急減速を防ぐのに間に合ったかどうかという疑問が浮上した。
米連邦準備理事会(FRB)は18日、50ベーシスポイント(bp)の利下げを発表。大幅利下げは最近の労働市場の弱さに対する緊急対応ではなく、底堅い経済を守るための措置だとした。
パウエルFRB議長の見通しがどの程度実現するかは、年内の株式・債券市場を左右する重要な要因となりそうだ。
景気後退を避けながらインフレ率を低下させる「ソフトランディング(軟着陸)」への期待から、今年は株式と債券価格が上昇してきた。しかし労働市場が軟化する兆しが見られ、成長を支えるためのFRBの行動が遅すぎたのではないかという懸念が強まっている。
投資顧問会社サウンド・インカム・ストラテジーズのエリック・ベイリッチ共同最高投資責任者(CIO)は「FRBがこれほどの大幅な利下げをするとは。どのような景気悪化の兆候がFRBには見えていたのだろう、と考える人がいるだろう」と語った。
18日の市場の反応は比較的穏やかで、米株・国債・ドルはFOMCの発表直後の上昇から反転する展開となった。
パウエル氏は会合後の記者会見で、今回の措置は昨年からのインフレ率の急低下を考慮した「再調整」であり、FRBは労働市場の軟化に先手を打ちたいと説明した。
だが一部の投資家はこうした見方に懐疑的だ。
ウィルシャーのジョシュ・エマニュエルCIOは「パウエル氏の発言とは裏腹に、50bpの利下げは後手に回ったという懸念を浮き彫りにしている」と指摘。経済の悪化を見越してFOMCの前から債券をオーバーウエートにし、高利回り債よりも投資適格債に重心を移していたと話した。
一方、今回の利下げは市場にとって好ましい展開であり、景気を浮揚させるとの受け止め方が多い。
クリアブリッジ・インベストメンツの経済・市場戦略責任者ジェフ・シュルツ氏は、ソフトランディングの可能性が大幅に高まり、リスク資産には追い風になるとの見方を示した。
実際のところ景気後退のさなかでない限り、利下げ後の株価はこれまで堅調に推移してきた。エバーコアISIの1970年以降のデータによると、利下げサイクル開始後の6カ月間で、S&P500種株価指数は平均14%の上昇を記録している。これに対し景気後退局面では、最初の利下げ後6カ月間で4%下落した。
ブラックロックのグローバル債券部門CIO、リック・リーダー氏は、最近の労働市場に関する統計が予想より弱かったため、投資家が過剰反応していた可能性があると指摘。「パウエル氏は堅調な経済だと述べたが、その通りだ」と語った。
<長期的な調整>
FRB当局者は直近の金利・経済見通しで、6月時点よりも大幅な利下げを見込んだ。だが利下げ幅は市場の予想を下回ったままだ。
FRBは現在4.75─5%の政策金利が来年末までに3.4%に低下すると予想しているが、金利トレーダーの予想は2.9%程度だ。またFRBは金利の最終到達点の予想を2.8%から2.9%へ小幅に引き上げた。
この見通しのギャップによって18日は長期国債の売りが誘発された可能性がある。10年債の指標銘柄の利回りは今週、2023年半ば以来の低水準を付けた後、3.73%前後で推移している。
バンガードの米国債・TIPS部門責任者、ジョン・マジール氏は長期金利の上昇を予想しているとし、「利下げを織り込むペースからすれば、これは正しい反応だと思う」と語った。
米大統領選の結果が今後の利下げの道筋を複雑にする可能性があると指摘する向きもある。
RBCグローバル・アセット・マネジメントの米国債券部門責任者アンドレイ・スキバ氏は「トランプ政権下で貿易戦争が勃発すれば、債券にとってマイナスになる可能性がある。インフレを招き、FRBの利下げ能力が制限されるだろう」と述べた。
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