• 2025/04/30 掲載

アングル:波乱相場下の企業決算、好反応に「3つの条件」 持続には懐疑も

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Noriyuki Hirata

[東京 30日 ロイター] - トランプ関税の影響が読み切れない中で、国内企業の決算シーズンが始まった。序盤の株価の反応をつぶさに見ると、ある3つの「条件」を備えた銘柄に対して市場が好反応を示す傾向が出ている。なかには条件が十分に満たせていなくても全体相場が反発基調にある中で底堅い動きとなった銘柄もあるが、売買の主体は短期筋が中心で、好反応の持続力に懐疑的な見方もある。

今回の決算シーズンの株価動向について「3つの条件がそろっていれば、翌日の好反応が期待できる」と、しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンド・マネージャーは指摘する。

その条件とは、1)今期の見通しを開示していること、2)業績予想が市場の予想を上回ること、3)自社株買いや増配といった株主還元に取り組んでいることーーこの3つだ。アナリスト予想は直近の状況まで織り込めておらず、確度が低下している可能性はあるが、決算の評価では目安として意識されるという。

これまでのところ、富士通の発表内容がパーフェクトに近い。今期の営業利益予想は市場予想を下回ったが、純利益予想は上回った。発行済み株式総数の6.75%に当たる自社株買いに加え、増配も発表した。同社の株価パフォーマンスは翌日にかけてTOPIXのそれを3ポイント上回った。

いずれの条件も満たさなかったキーエンスは、発表翌日に売りが優勢となり、TOPIXのパフォーマンスを0.3ポイント下回った。同社は平時から見通しを示さないことで知られるが、「企業見通しへの市場の関心が高まる中では嫌気された」(国内運用会社のストラテジスト)との見方もある。

先立って決算を発表した安川電機は、見通しを示しながらも米高関税の影響を織り込まなかったことで、関税影響に関する手掛かりを期待していた市場から嫌気された経緯が記憶に新しい。予想を開示しない銘柄は、投資家から敬遠されやすいとみられている。

<シーズン序盤、急落からの反動が底上げも>

もっとも、見通しを開示しない企業の数は、事前に警戒されたほどには多くないと受け止められている。「各社が工夫し、非開示を避けようとしている印象だ」と、野村証券・投資情報部の神谷和男ストラテジストは評価する。

加えて「事業環境は不透明ながら、株主還元や資本効率改善に積極対応していることは心強い」(りそなアセットマネジメントの戸田浩司ファンドマネージャー)との声もある。波乱相場でPER(株価収益率)などの投資尺度が使いにくくなる中、「PBR(株価純資産倍率)にも関心が向かっている」(野村の神谷氏)との見方がある。自社株買いなどの還元策はPBRの向上に寄与することから、あらためて好反応につながりやすい側面もありそうだ。

全体相場がリバウンド局面にあったことも、個別銘柄の底堅さと無縁ではないとみられる。ファナックは見通しが非開示だったが、株価は発表翌日にプラスで反応した。安川電機が売られた場面で、非開示のリスクがある程度、市場で消化されたとの見方があるほか「事前の警戒感が過度だったということだろう」(りそなAMの戸田氏)との見方がある。

ファナックは中国関連株の一角でもあり、決算前1カ月間にTOPIXのパフォーマンスを12ポイント下回っていた。予想を非開示としながらも、いったん悪材料出尽くしと受け止められ買い戻されたようだ。決算発表前1カ月のパフォーマンスがTOPIXを約10ポイント下回っていたニデックが、決算発表後にTOPIXを13ポイント上回って急騰したことも、リバウンドによる「底上げ」分があったと捉える向きもある。

足元では、日経平均が急落前のレンジ下限付近まで回復し「いいところまで戻った」(りそなAMの戸田氏)とみられている。日立製作所は、増益予想の上、株主還元に取り組みながらも、業績予想が市場予想を下回って株価は好材料出尽くしのような反応となった。リバウンド局面が一服しつつあることがうかがわれる。

株価水準が復元してきたことは、次の悪材料時の下落余地につながる側面もある。30日には、商船三井株が、決算発表を受けて急落する場面があった。米高関税政策の海上荷動きへの悪影響を想定して大幅減益、減配の予想を示したことが嫌気された。同社株は、外部環境が不透明な中、高配当株の一角として買い戻されてきていただけに失望売りが増幅されたとみられている。

いちよしアセットマネジメントの秋野充成社長は長期投資家は二番底を待っており、まだ買いに本腰を入れていないとみている。この上で「買い戻しは短期筋が中心。決算後に株価が好反応となっても、長続きしにくい」と話している。

(平田紀之 編集:橋本浩)

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