- 2025/05/02 掲載
英中銀は8日に0.25%利下げへ、トランプ関税背景に緩和ペース加速予想も
BOEのベイリー総裁は先週、国際通貨基金(IMF)が世界と英国の予想成長率を下方修正したことを受け、トランプ氏の関税がもたらすリスクを「極めて深刻に」受け止めていると語った。
これまでBOEが採用してきたのは「緩やかで注意深い」金融緩和路線で、力強い賃金の伸びを含む物価上昇圧力を踏まえ、昨年8月以降の利下げ回数は3回にとどまっている。
ただパンテオン・マクロエコノミクスのチーフ英国エコノミスト、ロブ・ウッド氏は、この路線を軌道修正すべきだと主張。「MPCは(米国の)関税発表前までは英経済は順調で、恐らく非常に緩やかな利下げが妥当だったと結論付けるだろう。しかしトランプ氏の関税が成長に冷や水を浴びせ、物価上昇を鈍化させる以上、やや急速でより回数の多い利下げが正当化される」と述べた。
ロイターによるエコノミスト調査では、BOEは今後3カ月ごとに25bpの利下げに動き、政策金利は年末に3.75%まで低下する見込みだ。金融市場は、年末の政策金利が3.5%に下がると想定している。
ウッド氏は、5月と6月に続けて利下げがあると予想。BOEのそうした連続利下げは2020年以来となる。
同氏は「これはトランプ氏の一貫性に欠ける行動に対する保険だ」と説明した。
<消えない物価圧力>
MPCメンバーの一部は、利下げ加速をためらうかもしれない。
3月の英消費者物価指数(CPI)前年比上昇率は2.6%と予想を下回ったとはいえ、依然としてBOEが目標とする2%よりずっと高い。さらに4月は、エネルギー料金上昇の影響で3%を超える見通しだ。
賃金の前年比上昇率も6%弱と、2%の物価上昇率に整合的とBOEがみなす伸びの約2倍に達しており、企業や家計の予想物価も高水準で推移している。
しかしMPCメンバーの中でタカ派とされるグリーン金融政策委員は先週、トランプ氏の関税は物価を押し下げるとの見解を示した。
英国は米国製品に関税を課しておらず、米国で割高になって売れなくなった欧州や中国の製品も大量に流入してくるとみられるためだ。
一方各種調査では英企業の採用人数が急減。企業側は国民保険の雇用主負担分増大と最低賃金引き上げに加え、国際的な混乱を理由に挙げており、これは最終的に賃金上昇率を抑える可能性もある。
UBSのエコノミスト、アンナ・ティタレワ氏は、エネルギー価格低下とポンド高によってBOEの今年末と来年末のCPI見通しはそれぞれ約0.3ポイント切り下がり、3.2%と2.1%になるだろうと述べた。
ウッド氏は、BOEが関税に起因する混乱の長期化を重視する姿勢になれば、それは5月だけでなく6月にも利下げを検討するシグナルになり得るとの見方を示した。
HBSCのエコノミスト、リズ・マーティンス氏は、BOEが「緩やかで注意深い」という現在の緩和路線の表現を修正する可能性に言及。注意深い利下げという方には、行き過ぎるリスクと同じぐらい踏み込み不足のリスクも含まれると付け加えた。
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