- 2025/05/28 掲載
アングル:米小売り企業、非公開化検討 トランプ関税で株価乱高下
[ニューヨーク 27日 ロイター] - トランプ米大統領の貿易戦争で株価が乱高下している米小売り企業の間で株式非公開化を検討する動きが出ている。
米スニーカー大手のスケッチャーズは今月、非公開化を決定したが、投資銀行の関係者や合併・買収(M&A)専門の弁護士は、短期的に小売り企業の非公開化が相次ぐと予想している。
販売製品の多くを海外で製造する小売り業者は、二転三転するトランプ政権の関税政策で特に打撃を受け、業績見通しの撤回を余儀なくされている。
<スケッチャーズの非公開化>
スケッチャーズの株式時価総額はトランプ政権が第1弾の対中関税の発表した前日の1月30日に過去最高の約118億5000万ドルを記録。その後の相次ぐ関税発表で時価総額は4月末には約74億ドルに減少した。
同社は製品の大半を中国とベトナムで製造。「グローバルな貿易政策に起因するマクロ経済の不確実性」を理由に今年の業績見通しを撤回した。
関係筋によると、スケッチャーズは株価の急落前から投資会社3Gキャピタルとの交渉を進めていたが、関税を巡る混乱を受けて、非公開化の魅力が一段と高まった。
同社は今月5日に約94億ドルで3Gキャピタルに身売りし、株式を非公開化した。これに伴い、事実上、業績を外部に公開する必要がなくなり、市場の不安定な値動きから企業価値を守ることが可能になった。
<非公開化の候補>
関係筋によると、他の小売り企業もすでに投資会社などとの交渉に入っている。
UBSで米州の消費・小売り分野の投資銀行業務を統括するカート・アンソニー氏は「猛烈なボラティリティーとマクロ環境の変化を受けて、企業経営者はこう考え始めているーー非公開の環境で事業を運営した方が良いのではないか。四半期ごとに市場に業績を報告する必要がなくなり、運営・財務・資本配分に関する意思決定を非公開で管理できる」と述べた。
S&P総合500種指数は年初から1.1%下落しているが、S&P小売りセレクト産業指数は6%値下がりしている。
ブランド管理会社オーセンティック・ブランズ・グループのジェイミー・サルターCEOは「多くのCEOが連絡をくれ『疲れた、自分のしていることは好きだが、非公開化する時かもしれない』と話している」と指摘。「優良企業は今後も非公開を維持するか、非公開化に踏み切るだろう」と述べた。
同社は「リーボック」や「チャンピオン」など複数のアパレル企業の知的財産を所有。先週はリーバイスから「ドッカーズ」の知的財産権を買収した。
投資銀行の関係者は、スケッチャーズのような家族経営の小売り企業や単一の株主が経営権を持つ小売り企業が、非公開化の対象になりやすいと指摘。
具体的には、創業者のケビン・プランクCEOが議決権の過半数を握るアンダーアーマー、ティモシー・ボイル会長兼CEOの一族が筆頭株主であるコロンビアスポーツウェアカンパニー、投資ファンドのLキャタルトンが過半数株式を保有するビルケンシュトックなどを挙げている。
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