• 2025/05/28 掲載

アングル:中国経済に根強い将来不安、金利下がっても積み上がる預金

ロイター

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[北京/シンガポール 27日 ロイター] - 中国の主要銀行が先週預金金利を引き下げた際、ミロ・チェンさん(37)はソーシャルメディアで「金利が下がった際にあなたは貯蓄しますか、それとも消費しますか」とアンケート調査を行った。

回答者約5000人の80%超が貯蓄を選択し、内需を喚起して経済成長につなげようという政府の取り組みがいかに難しいかが浮き彫りになった。

中国南部のインターネット企業で働くチェンさんは「結果は一方的で人びとが(将来を)とても心配している様子がうかがえる」と語った。自身も勤め先がいつまで生き残れるか分からないとし、やはり貯蓄すると付け加えた。

預金金利低下の背景には、中国人民銀行(中央銀行)が監督する自主規制機関による預金金利上限の引き下げがあった。各銀行の利益率を守るとともに、貯蓄を抑制して消費や投資を促す狙いとみられている。

しかし近年の預金金利低下が続いた局面でも、爆発的な預金の伸びに歯止めはかかっていない。むしろ、自力でセーフティーネットを築こうと努力している消費者にとって、金利収入減少という副作用への懸念を強める形になりつつある。

公式データによると、今年3月末時点で中国の家計が保有する預金残高の総額は160兆元(22兆3000億ドル)を突破し、前年比で10.3%増えて昨年の国内総生産(GDP)の118%相当に達した。一方、今年1-3月の小売売上高は前年比4.6%増だった。

グローバルデータ・TSロンバードAPACのエコノミスト、ミンシャオン・リャオ氏は、中国の人びとにとって金利低下は「所得の伸びを鈍化させる公算が大きい」と指摘する。

リャオ氏は「特に1980年代生まれの人びとは、低金利が続きそうなことに伴ってこの先10年は消費よりも貯蓄を拡大して退職後のお金を確保しなければならないのではないか」と述べた。

中国の家計が貯蓄を続ける原因は、デフレ圧力に見舞われて低迷する経済において仕事が保障されないのではないかとの不安や、長引く不動産不況に起因する資産形成面の懸念だ。

リャオ氏を含む複数のエコノミストは、中国で消費を上向かせるための最善の政策は年金や他の給付制度の基盤を強化し、家計が必要とする貯蓄額を減らすことだと提言する。

1年前にマーケティングの仕事を失った後、フリーランスで働くローレンス・パンさん(30)は、もはや社会保険料を支払っていない。支払い能力はあるが、公的年金制度は信頼できないとの理由で、自分で貯蓄する方がましだと考えている。

実際、中国社会科学院の見通しでは、このままだと公的年金は2035年までに枯渇するという。

パンさんは収入の3分の2前後を当座預金口座に入れている。定期預金金利は選択を迷うには低過ぎるからだ。「預金金利がもっと高ければ、私の貯蓄と消費の比率はもっとバランスを保つだろう。金利上昇は経済が改善しているという証拠で、そういう場合は消費を増やす」と話した。

<縮み志向>

中国のGDPに占める家計消費の割合は、世界平均よりおよそ20ポイントも低く、政府は成長の原動力としてより重視すると何度も表明してきた。しかも昨年、政府目標の5%前後という成長率を何とか達成できたとはいえ、輸出に大きく依存する形で、その輸出の先行きがトランプ米政権の関税措置で危うくなった以上、内需シフトは喫緊の課題になっている。

ところが金利低下は、そうした取り組みの足かせになるかもしれない。

カーネギー・チャイナのマイケル・ペティス上席研究員は、中国政府は家計部門が主体の純貯蓄者から、企業と政府で構成される純債務者への資源移転を進めていると分析。「現在の中国や1990年代の日本のような金融システムにおいて、実質金利低下に消費押し上げ効果はないように見える」と述べた。

また数十年にわたる経済の停滞が続いた日本と同様に、中国でも債務者にもたらす副作用が大きくなりつつある。

ファゾム・コンサルティングのシニアエコノミスト、エリザベス・ウェレンスキオルド氏は、中国での金融緩和は多くの企業を長期間、低コストでの借金に依存させ、さまざまな産業全体の「ゾンビ化」を招くと説明する。

ウェレンスキオルド氏によると、建設や航空、旅行、コンピューターサービスなどの業界のキャッシュフローがカバーする利払い費用は5カ月分弱にとどまっており、5カ月未満は「危険ゾーン」とみなされる。

同氏は、病気の根本的な治療をせずに痛み止めを飲み続けているようなもので、それは副作用のリスクを増大させ続けると警告した。

家計の節約志向は、実体経済全体にコストカットを強制し、デフレスパイラルの危険を生む可能性もある。

昨年、収入から貯蓄に回すお金を増やすために首都北京から物価が安い中部の武漢に移った書籍編集者のエリン・ヤオさん(32)は、勤め先の企業がより低価格の書籍を販売する方針に移行したことで経済の先行きを不安視しており、預金金利がたとえゼロになっても貯蓄をする決意だ。

ヤオさんは「預金金利低下に対する私の最初の反応は、経済が下降局面に入ったのではないかという思いだった。今人生を楽しむために手持ちのお金全てを使わない。両親か自分が病気になった場合に備えてある程度は残し続ける」と明かした。

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