- 2025/05/29 掲載
アングル:海外投機筋の巨額円買い、反転トリガーはドル150円前後か
[東京 29日 ロイター] - 外為市場では、ドル/円が短期的に底打ちしたとの見方が広がりつつある。過去最大規模に積み上がった投機筋の円買いポジションの巻き戻し次第では、上昇に弾みがつくとの観測も出てきた。投機筋の円買いの平均取得価格を考慮すると、巻き戻しのトリガー水準は150円前後とされる。現在の水準からはまだ距離があるが、戻り局面が続くようなら強く意識されそうだ。
海外勢の円買いを分析したのは、JPモルガン・チェース銀行為替調査部長の棚瀬順哉氏。米商品先物取引委員会(CFTC)が週次でまとめているIMM通貨先物非商業部門の取り組み状況とドル/円の推移から割り出すと、海外投機筋が2月以降に仕掛けた円買いの平均レートは、おおむね148円半ばになるという。
ドルは今月に入り、米国と中国の関税率引き下げ合意などを受けて、148円半ばまで一時上昇したが、その後142円台へ反落した。棚瀬氏は「試算通り148円台では損失確定の円売り戻しには至らず、耐えられることが確認できた。反転のトリガーはドル150円前後になるのではないか」と話している。150円はトランプ氏が相互関税を表明した4月2日に付けた高値水準でもある。
CFTCのIMM通貨先物データによると、投機筋の円の持ち高は、今年2月初旬に買い越しへ転じて以降、最新の今月20日まで16週連続、およそ4カ月続けて買い越しとなった。これはコロナウィルスのまん延で、世界経済が事実上の活動停止に追い込まれた2020年3月から21年3月までの53週連続以来の記録だ。
しかし21年当時の円買い持ち幅は、最大でも5万枚超。最近の最大値18万枚弱にはほど遠い。
棚瀬氏は今回の円買いが異例の大きさとなった要因として、1)日米金利差から発生するドル売り/円買いポジション構築に伴う金利差コストが従来より小さい、2)日米金利差が縮小傾向にある、3)米政府が水面下で円安是正を求めているとの思惑が広がっていることなどにより、円が買われやすくなっている点を挙げている。
29日の東京外為市場では、米国際貿易裁判所がトランプ大統領が発動した一連の関税の大部分を差し止める判断を下したことを受けて、ドルが146円前半まで急速に上昇。5月15日以来、2週間ぶり高値を更新した。
トランプ政権は直ちに控訴したが、市場では「強引なトランプ政権の手法に一石が投じられた形で、市場の過度な悲観はいったん和らいだ。政府の反応は予断を許さないが、目先はドルがもう少し買われる可能性もある」(りそなホールディングスシニアストラテジストの井口慶一氏)との指摘が出ている。
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