- 2025/06/20 掲載
アングル:世界的にIPOが急減、米関税や市場不安定化などが重圧
LSEGのデータによると、年初から今月17日までの世界全体のIPO(金額ベース)は前年同期比約9.3%減の443億ドルと、9年ぶりの低水準を記録した。
地域別では米国が12%減の123億ドル、欧州は64%減の58億ドル。ただアジア太平洋は28%増の168億ドルだった。
トランプ米大統領による関税措置が市場の緊張を再燃させ、その後同氏が「相互関税」の上乗せ分発動を一時停止し各国との交渉に乗り出したものの、世界中の企業は需要や投資について先読みが難しくなった。
アテナ・キャピタルのイサベル・フライドハイム創業者兼マネジング・パートナーは「今すぐ企業がIPOに動くのは賢明ではない。市場のボラティリティーはかつてないほどだ。まだ黒字化が手探り状態のテック企業にとっては本物のリスクがある。IPO後に株価が下がれば、特に着実なキャッシュフローが乏しいか成熟段階に達していない企業は、株価回復が難しくなる」と述べた。
全体が低調になる中で、中国と日本は上場が急増している。規制緩和と市場心理改善が原動力だ。目立ったのは中国の車載電池大手、寧徳時代新能源科技(CATL)のIPOで、資金調達額は46億ドルと今年最大規模だった。
一方複数のアナリストは、今年後半のIPO市場回復に慎重ながら楽観的な見方をしている。米国でも、デジタル銀行チャイム・ファイナンシャルの株価が上場後に高騰するなど明るい兆しが出てきた。今後はデジタル決済のクラーナや暗号資産(仮想通貨)交換所ジェミニ、新興半導体のセレブラスといった有力案件が控える。
ランニング・ポイント・キャピタル・アドバイザーズのアシュリー・シュルマン最高投資責任者は「米国勢とともに、欧州の防衛企業やインドの消費関連企業も(IPOを)申請しており、ボラティリティーが想定通りなら今年終盤は『小さな滴から激流へ』という典型的な展開になる可能性がある」と語った。
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