- 2025/06/24 掲載
日産きょう株主総会、ファンドが「親子上場」問題視 再建策の信任焦点
[東京 24日 ロイター] - 日産自動車が24日に開く定時株主総会は、上場している子会社との関係見直しを迫る「物言う株主」の提案がどこまで支持を集められるか、再建に取り組むイヴァン・エスピノーサ新社長ら経営陣がどの程度の信任を得られるかが焦点となる。
<完全子会社化と少数株主の利益保護>
株主提案した「物言う株主」と呼ばれる投資運用会社ストラテジックキャピタル(SC、東京・渋谷)は、日産の上場子会社、日産車体の株式3.4%を保有する。親子上場の解消などを求めており、昨年も日産車体に少数株主の権利と保護を要求する株主提案を出したが、最大の議決権を持つ日産の反対で否決された。
日産車体は、日産が50%の株式を持ち、売上高の98%が日産向けの生産子会社で、社長も日産出身者。SCの丸木強代表は23日のロイターとの取材で、「日産車体は日産の工場の1つに過ぎず、日産の言いなりでしかない。独立性がない」と指摘。上場企業としての体を成していないと主張する。
株主提案できる権利を得るため、SCは昨夏に日産株300単位以上を購入して6カ月以上継続保有し、株主提案を出した。具体的には、日産車体などの上場関係会社について完全子会社化や吸収合併、株式の売却・保有などを年1回以上検討し、結果を開示するよう定款で定めることを求めている。
SCはまた、上場関係会社の株式が上場維持基準に抵触または抵触の恐れがあると判断された場合、取締役会は完全子会社化や吸収合併、株式売却、少数株主の利益保護などの対応方針を決めるよう定款で定めることも提案した。
SCのこうした主張に対し、日産は上場関係会社の少数株主の利益相反リスクなどを真摯(しんし)に検討していると反論。子会社などの取り扱いは時々の状況を踏まえて決定すべきで、定款で一律に定めれば機動的な対応の妨げになると反対している。
関係者らによれば、日産車体の湘南工場(神奈川県平塚市)は日産の構造改革の一環として閉鎖が検討されている。
丸木氏は、本来なら工場閉鎖は「日産車体に独立性があるならば、少数株主が50%存在している日産車体が独自に決めるべきだ」と批判。日産が日産車体の少数株主に配慮する必要性があることから、親子上場を続ける限り、日産自身の構造改革を阻害するとの見方を示した。「工場閉鎖と完全子会社化、少数株主の利益保護を全部セットで同時にやるべきだ」と述べた。
トヨタ自動車がグループとして豊田自動織機の非公開化を決めたことにも触れ、トヨタは「投資家からのプレッシャーを感じて変わらなければいけないと思い、変わったのだと思う」と語り、「日産経営陣にも考えてほしい」と決断を促したいと期待を寄せた。
日産が日産車体を完全子会社化する場合、残りの50%を買い取る必要がある。日産車体の時価総額は1500億円弱。現在の株価で計算すると、完全子会社化にかかる資金はプレミアム(一定の上乗せ幅)なしでは約745億円。日産は、25年3月期末の手元資金が約2兆1500億円で、未使用のコミットメントラインも含めると、合計で3兆4000億円の流動性を確保していると説明している。
SCは日産車体だけでなく、三菱自動車や日産東京販売ホールディングスといった持ち分法適用会社との関係も問題視している。
<内田前社長らに6億円超える報酬>
米国や中国での販売が低迷する日産は、25年3月期に6708億円の最終赤字(前の期は4266億円の黒字)を計上し、4年ぶりに無配へ転落した。26年3月期の連結業績予想は営業損益と純損益の開示を見送り、2年連続の無配を予想する。
総会では販売や株価の低迷、無配を巡って株主から厳しい声が相次ぐことも予想される。業績不振で退任した内田誠前社長ら4人に総額6億4600万円の報酬を支払う予定であることも、批判の対象になる可能性がある。
内田氏の後任として4月に就任したエスピノーサ社長は、工場閉鎖や人員削減の規模上積みを進めており、株主からの評価に注目が集まる。社長として初めて臨んだ5月の決算会見では、27年度までに国内外の車両工場を17から10に減らすほか、計約2万人を削減することを公表した。
1999年に当時のカルロス・ゴーン社長の下で策定した「リバイバルプラン」以来の大規模な合理化策で、関係者らによると、国内の主力だった追浜工場(神奈川県横須賀市)の閉鎖を検討。日産車体の湘南工場閉鎖も実現すれば、創業の地の神奈川県から生産拠点がなくなる。
日産は新任のエスピノーサ社長や赤石永一チーフテクノロジーオフィサーのほか、再任の木村康取締役会議長など12人の取締役選任議案を総会に諮る。
SC以外の株主提案は、個人から3議案出ている。取締役等が説明責任を果たしておらず株主総会の形骸化を防ぐための「是正役」の新設に関する件、株価や業績との連動が明確に担保されていない高水準な取締役報酬の見直しに関する件、今期末の期末配当1株につき20円などを求める件が株主提案として出されている。
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