• 2025/07/11 掲載

アングル:超長期金利再び不安定化、海外勢が参院選注視 格下げリスクも警戒

ロイター

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Mariko Sakaguchi

[東京 11日 ロイター] - 円債市場で超長期ゾーンの値動きが再び不安定となっている。根強い需給不安に加え、財政拡張懸念やそれに伴う日本国債格下げリスクへの警戒感が海外勢にも広がっている。財務省は7月から国債発行減額に踏み切ったが、需要に限りがある中で、20日の参議院選挙の結果次第で消費税減税が現実味を帯びてくれば、超長期債利回りは一段と上昇し、5月に付けた高水準を更新する可能性が指摘されている。

<日本国債格下げを意識>

今週に入って、7―8日の2日間で現物市場の新発30年債利回り、新発40年債利回りは一時20ベーシスポイント(bp)を超える急騰となった。「日本国債の格下げリスクを意識して、海外勢が保有していた円債のポジションを落とす動きが出始めている」とSBI証券のチーフ債券ストラテジスト、道家映二氏は指摘する。

背景にあるのは財政拡張懸念の高まりだ。複数の国内メディアからは参議院選挙で自民・公明の与党が過半数を維持するのは難しいとの情勢調査が伝わった。米格付け大手ムーディーズがロイターのインタビューで「必要であれば見通しの変更を経ることなく、(日本国債の)格下げに動く可能性がある」との見解を示したことも材料視されたという指摘もある。

6月の超長期債入札には欧州勢の参加が観測された。トランプ政権の政策の不透明感から投資先を分散する流れがあり、流動性が高く、ヘッジプレミアムが付いて高い利回りが確保できる日本国債に資金が振り向けられていた。それだけに「国内投資家による投げが出たほか、買いの手も一気に引いている状況」(国内証券債券セールス担当)という。

<買い手不在に対する根強い懸念>

足元では超長期ゾーンの金利上昇圧力は収まっているが「需要と供給のバランスがまだ不安定な可能性がある」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券のシニア債券ストラテジスト、大塚崇広氏は指摘する。

大塚氏の試算によると、2024年度の財務省発行分から日銀買い入れ分を差し引いた超長期債のネット供給額と信託銀行を除く主要6業態の国内投資家によるネット売買高の差を示した「超長期債需給ギャップ」は18.5兆円程度の供給超で、2010年以降で最大だった。25年度は財務省による国債発行減額でギャップが縮小する見込みだが、14兆円程度と、2010年以降では比較的高い水準が続く可能性が高いという。

実際、7月の国債発行減額後に実施された超長期債入札は弱いか、もしくは無難な結果にとどまった。超長期ゾーンの流通市場では「オファーとビッドが離れすぎていて、出合いがつかない。まるで空中戦をしている状態だ」(前出の国内証券債券セールス担当)とされ、地合いが改善したとみる向きは少ない。

大手生保は10年ゾーンでの買いが観測される一方、超長期債の買いは現状では限定的とみられている。日米関税交渉に進展がみられず、早期の日銀の利上げ観測が高まらない中、ヘッジファンド勢などが、イールドカーブのフラット化によって利益の出るポジション(フラットナー)を組みづらいことも超長期債の需要が高まらない一因だ。

<消費税減税の実現性に思惑、日本売りの可能性>

SBI証券の道家氏は、20日投開票の参院選は「海外勢による注目度が高い」と指摘する。選挙の行方をにらみ、海外勢はポジションをニュートラルにし始めているとの見方を示す。

参院選の結果を受け、仮に財政出動となったとしても、目先の国債増発は10年以下のゾーンが中心との見方が市場では大勢だ。超長期金利の不安定な動きを受けて国債発行が減額された経緯があるためだ。ただ、消費税減税が現実味を帯びてくれば必要な財源が拡大し「将来的な財政の持続性に焦点が集まる」(国内証券アナリスト)ため、超長期ゾーンへも懸念が広がりやすいという。

「海外勢は、財政懸念にかなり敏感で嫌がる傾向にある」(国内銀の運用担当)とみられており、懸念が高まれば一気にポジションを落とす動きが進む可能性がある。日本証券業協会が発表している公社債店頭売買高によると、海外勢は今年1月以降、5カ月連続で超長期債を買い越し、その額は7兆円超に膨らんでいる。

買い手不在の状況下で、政局不安や財政懸念、それに伴う日本国債の格下げリスクが強まれば、海外勢による売りを契機に売りが加速しかねず、超長期債は5月に付けた過去最高水準の利回りを更新していく可能性がある。

三井住友銀行のチーフストラテジスト、宇野大介氏は「日本売りという悪い金利上昇になっていく可能性がある」と指摘している。

(坂口茉莉子 編集:石田仁志)

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