• 2025/07/29 掲載

インタビュー:関税巡る不確実性十分に晴れれば利上げ模索か、物価上振れに要警戒=中曽元日銀副総裁

ロイター

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Leika Kihara

[東京 29日 ロイター] - 中曽宏・元日銀副総裁(大和総研理事長)は、ロイターのインタビューに応じ、米国の高関税政策を巡る経済・物価の不確実性が十分に晴れ、経済・物価見通しに確信が得られれば、日銀は再利上げを模索するとの見方を示した。その上で、高水準で推移する賃金や、値上げに前向きな企業行動、食品価格の高騰がインフレ予想に影響を与える形での物価の上振れリスクに警戒感を示し、ビハインドザカーブに陥る(後手に回る)ことがないよう政策を運営する必要があると話した。

中曽氏は、日米関税交渉が合意に達し、自動車を含む米輸入関税が引き下げられたことはポジティブな展開としつつも、日本経済は「米関税による輸出減少だけでなく、世界経済の減速の悪影響を受けるだろう」と述べ、不確実性の高さを勘案すると「日銀がしばらく様子見姿勢を維持する必要性を感じるのも理解できる」と語った。一方、そうした不確実性が十分晴れ、「経済・物価が見通し通り推移する」との確信が得られれば、日銀は再利上げを模索すると予想した。再利上げのタイミングなどは「経済・物価の今後の推移に大きく依存する」として明言を避けた。

日銀は5月1日に公表した展望リポートで、2025年度・26年度の消費者物価指数(除く生鮮食品)の予想を下方修正した上で、物価のリスクバランスについて「下振れリスクの方が大きい」とした。だが中曽氏は、物価について「上振れリスクもある」とみている。深刻化する人手不足もあって賃金は高水準で推移しており、賃上げは来年も続く見込みであるほか、企業の価格設定行動も変化し、賃金上昇やサプライチェーン(供給網)の寸断、円安などによるコスト上昇を「よりスムーズに転嫁するようになった」と分析した。

また、物価を見る上で特に注意が必要な点として、予想物価上昇率が各種サーベイや市場指標から見て上昇トレンドにあることを挙げた。日本のインフレ予想は足元の物価情勢に影響されやすい性質があるが、「人々が頻繁に購入する食品の価格はヘッドラインのインフレ率よりかなり速いペースで上昇しているため、体感物価は高く、予想物価上昇率がオーバーシュートするリスクがある」と指摘した。日銀は金融政策運営に当たって、これによる物価の上振れリスクにも注意を払いながら「ビハインドザカーブにならないよう運営する必要がある」と述べた。

実質金利は短・長期ともに依然低いため、再度利上げしても「緩和的な金融環境が大きく変化することはない」とも語り、今後も利上げを継続していく必要性を強調した。

中曽氏は現在進行中の日銀による国債買い入れ減額(QT=量的引き締め)についても言及した。最近の超長期金利の上昇は「市場からのメッセージ」が反映された動きであり、「市場機能の表れ」とも考えられると述べた。

大和総研の試算によれば、現行計画のペースで減額が実施された場合、日銀の国債保有残高は27年3月末でも約485兆円と、QT開始時点から16%程度の減少にとどまるという。日銀のバランスシート縮小は「かなりゆっくりしたペースで進行する見通し」とした。最終的にどの程度の規模まで縮小するかについては「まだ見通すことができない」とし、日銀は「市場の反応を注意深く見ながらQTを進めていくだろう」と述べた。

日銀が国債買い入れの減額を進める中、新たな買い手の存在が必要となるが、中曽氏は規制対応上の理由もあり、国内銀行勢は買い入れを大きく増やすことは難しく、海外投資家のプレゼンスが今後も高まっていくだろうと予想した。海外投資家は国債保有に高めのプレミアムを求める傾向があり、そうした投資家の信認を確保・維持するためにも、持続可能な財政政策の確立は不可欠との見方を示した。仮に再度金利が急騰した際の対応については「イールドカーブの特定のゾーンが一時的に急騰するような場合、日銀が持っているツールを使って介入することはあり得る」とする一方で、財政運営に対する信認といった財政構造要因による市場の変動に「日銀ができることはほとんどない」と語った。

このインタビューは28日に英語で実施しました。

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