- 2025/09/09 掲載
アングル:「総裁選ラリー」いつまで、昨年と異なる環境 期待と警戒交錯
[東京 9日 ロイター] - 自民党の総裁選挙を前に、財政拡張的な政策への思惑から日経平均は史上最高値を更新し「総裁選ラリー」の様相となっている。海外でも知名度の高いリーダー誕生への期待感もある。ただ一方で、昨年の総裁選時とは投資環境が違うとして、持続性については懐疑論も根強い。
2024年の自民党総裁選の告示から投開票までの12営業日で、日経平均は3600円超値上がりした。昨年は、高市早苗前経済安全保障担当相が有力視され、積極財政や金融緩和など、リフレ的な政策を期待する「高市トレード」が活発となった。
今回も、高市氏が出馬の意向を固めたと報じられる中、きょうの日経平均は初の4万4000円台に乗せる場面があり、期待先行の株高となった。
UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメントのストラテジスト・小林千紗氏は「高市氏は緩和的、小泉進次郎農水相は小泉純一郎氏のイメージを引き継ぐことから構造改革の印象が海外勢の間では強い」といい、いずれかが選ばれた場合、株価にポジティブとの見方を示す。
<強気の中で不安材料も>
一方、今回の総裁選ラリーでは、その持続性を疑問視する声も少なくない。
ひとつは株価の水準だ。前年は7月に高値を付けた後、8月の急落を経て前回総裁選があった9月時点では回復の途上だったが、足元では最高値を更新したばかりだ。
日経平均の株価収益率(PER)は8日時点で過去数年の中心レンジ14―16倍を大きく上回る17.96倍に高まっており、割高感はぬぐえない。昨年9月は14―15倍台で推移し、レンジ内にとどまっていた。
日本株への影響力が意識される海外勢による買いを巡っても、期待感がある一方、持続力は読みにくい。海外勢は4月の株価急落以降、7.5兆円を買い越している。加えて市場では参院選に敗北したあたりから「先回りして日本株を買っていたとの思惑もある」として、岡三証券のシニアストラテジスト・大下莉奈氏は買い余力は限られそうだとみている。
自民と連立を組む公明党からは「保守中道路線の私たちの理念に合った方でなければ、連立政権を組むわけにいかない」との斉藤鉄夫代表の発言が伝わっている。市場では「暗に、保守色の強い高市氏では嫌だということを示唆しているのではないか」(松井証券のシニアマーケットアナリスト・窪田朋一郎氏)との指摘も聞かれる。岡地証券の投資情報室長・森裕恭氏氏は「政策運営の先行きが読みづらく、期待先行の株価上昇基調を維持するのは難しいのではないか」と指摘する。
衆院選、参院選と連敗を重ねた中で自民党の議員数は減少し、そもそも各候補が推薦人20人を集められるか不安視する声もある。東海東京インテリジェンス・ラボのシニアアナリスト・澤田遼太郎氏は「高市氏が出馬の意向を固めたと伝わってはいるが、前回の推薦人は落選する議員もいたため、推薦人を確保できるか見極めたい」という。
<米経済にも目配り必要>
米経済にも目配りは必要になる。きょうは高値更新後に上げ幅を縮小してマイナスで引け、総裁選ラリーにも一服感が出た。達成感に伴う利益確定売りだけでなく、今週は米国で8月米生産者物価指数(10日)、8月消費者物価指数(11日)とインフレ指標の発表を控えており、米利下げの観測に影響を与えるか見極めようとする動きとの受け止めもある。
前週末に公表された8月の米雇用統計は市場予想を大幅に下回った。マネックス証券のチーフ・ストラテジスト、広木隆氏は「米国がリセッション(景気後退)に陥ると、利下げをしても株安となる可能性が高い」と話している。インフレ再燃となればスタグフレーションのリスクも意識されかねない。
高値警戒に加え、米経済を見極める局面になってくる中、日経平均は「目先は4万3000円台での値固めではないか」と岡三証券の大下氏は話している。
(浜田寛子 編集:平田紀之、橋本浩)
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