- 2025/10/23 掲載
アングル:金の高騰、新たな局面に「FOMO」買い浮上で警戒感強まる
[ロンドン 22日 ロイター] - 金価格の目覚ましい上昇相場が新たな局面に入った。投機筋の影響が膨らんでボラティリティーが高まり、中央銀行の需要が後退しているにもかかわらず、市場関係者は相場が来年さらに高騰するとの予想に固執している。
金現物は3月に1オンス=3000ドル、今月には同4000ドルの心理的な抵抗ラインを突破し、年初来では54%上昇している。今年の上昇率は1979年以来で最高となりそうな勢いだ。
上昇の要因は、政治的緊張や米国の関税を巡る不透明感、そして最近では「FOMO(取り残される恐怖=fear-of-missing-out)」買いの波も加わった。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)のシニア市場ストラテジスト、ジョン・リード氏は「上昇の性質が変わった。過去2年間は粘着的な新興国市場の買い手が相場を主導する場面がほとんどだったが、今の主役は西側の投資家だ」と指摘。「この結果、金相場を動かす要因が変化し続けそうな中でも、不確実性とボラティリティーが高まっている」と述べた。
金は20日に1オンス=4381ドルと、1年前にはほとんど誰も予想しなかった水準を記録した。一生目にすることはない、とさえ考えられていた水準だ。
日本で来週開始されるロンドン地金市場協会(LBMA)の会議出席者らは1年前、現時点の相場を2941ドルと予想していた。
次々と節目を突破してきた金は21日に5%下げ、過去5年間で最大の急落となった。市場の状態を示す指数は「買われ過ぎ」から「正常」へと、7週間ぶりに変化した。
ジュリアス・ベアのアナリスト、カルステン・メンケ氏は「これほどの急激な上昇の後に調整が起こるのは珍しいことではなく、健全だと考えられる。金のファンダメンタルズは依然良好だ」と話した。
<米利下げと株価>
米連邦準備理事会(FRB)が9月に利下げした時点から、金は20%も上昇して20日に過去最高値を付けた。
オックスフォード・エコノミクスのアナリストらによると、この上昇ぶりは最近のFRBの利下げ局面をしのぐものだ。
MKS・PAMPの金属ストラテジー責任者、ニッキー・シールズ氏は「FRBは過去のサイクルでは、米国株が過去最高値を更新し、市場でバブルが取り沙汰され、インフレ率が物価目標を明確に上回った状態で利下げを行ってはいなかった。この『全てがバブル』相場はまだ続く余地があり、金価格が4500ドルを突破しても、個人投資家のFOMO買いを持続させるだけだろう」とみている。
<S&P500の上昇に警戒感>
市場専門家は米S&P500種総合株価指数の高騰と、それと時を同じくして投資家の資金が金に流入する様子を警戒している。過去のケースでは、株式市場に急激な調整が起これば、金を含む「安全資産」も売りを余儀なくされているからだ。
HSBCのアナリスト、ジェームズ・スティール氏は最近のリポートで「金買いの一部は株価下落に対するヘッジとして行われてきた。過去に見られたように、株価に調整が起これば投資家は現金確保、あるいはマージンコール(追加証拠金の差し入れ要求)に応じようと金を売るため、長期的な売りを誘発しかねない」と語った。
<中銀、機関投資家>
過去1カ月間に金価格が異例の上昇を示したため、新興国の中央銀行は共通の目的、すなわち外貨準備を多様化するために金の保有割合を増やす作業を積極的に進める必要がなくなっている。
2022年末から地金の需要を支えてきた中銀の買いは、今後何年間も高水準を保つと予想されているものの、価格が上がれば自動的に保有額は増える。
MKS・PAMPのシールズ氏は「長期投資を行う機関投資家にも同じことが言える。機関投資家はおそらく、(金保有が)ポートフォリオにおける閾値(しきいち)に到達しており、リスクを下げて金保有を減らす必要がある」と述べた。
アナリストはまた、2026年に投資家の勢いが減速するとすれば、現物の過剰供給が相場を圧迫し始めると警戒している。主要な消費地域で、宝飾品セクターからの金需要が減少しているからだ。
トレード・データ・モニターによると、中国の1―9月の金輸入は量ベースで26%減少し、インドは1―7月に25%減少した。
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