- 2025/11/05 掲載
マネタリーベース、国債売却増で18年ぶり減少幅 QTにはなお時間
Tetsushi Kajimoto
[東京 5日 ロイター] - 日銀が5日に発表した10月のマネタリーベース平均残高は、前年比7.8%減の616兆5980億円で、14カ月連続で減少した。国債買い入れ減額の方針の下、緩やかな減少が続いており、マイナス幅は2007年4月(12.2%減)以来、18年6カ月ぶりの大きさとなった。ただ、市場では、欧米と比べ日銀の量的引き締め(QT)は「周回遅れ」で時間がかかるとの見方が大勢だ。
季節調整済みのマネタリーベースは、前月比17.9%減少した。前月の同23.5%減に続いて大幅な減少を記録した。平均残高は618兆4639億円となり、5カ月連続で減少した。
マネタリーベースの減少幅は前月の6.2%から拡大した。国債売却とそれに伴う当座預金残高9.1%減少(前月7.1%減)が大幅に減ったことが最大の要因。当預は08年8月(10.1%減)以来の下げ幅だった。日銀の担当者によると、民間貸し出し支援策「貸出増加支援資金供給」による新規貸し付けが6月で終了して、9月・10月は前年同月貸出増の裏が出たという。
大規模緩和の修正から金利の正常化に向かって国債買い入れ減額の方針を維持する中、日銀は「マネタリーベース、日銀当預ともにトレンドとしては緩やかな減少傾向を続けるだろう」(担当者)としている。
ただ、民間エコノミストの間では、欧米の中銀を比べると日銀の引き締め方針は「時間軸が全然違い、まだまだ時間がかかる」(SMBC日興証券 チーフエコノミスト 丸山義正氏)との見方が多い。
利下げに転じていた米連邦準備理事会(FRB)はパウエル議長がQTの停止を示唆し、議論は準備預金やバランスシートの負債側をどうするのかという点に移ったとみられる。丸山氏は「一方で、日銀は国債売却に加えてようやくETF・J-REITの売却を決定したばかり。その方針に違和感はないが、それに沿って粛々と資産売却を進めていくしかないだろう」と指摘した。
日銀は7月の金融政策決定会合で、QTの一環として保有する上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(REIT)などの市場での売却を決定した。植田和男総裁は会見で、100年以上かけて売却していくとの見通しを示した。
マネタリーベースは、市中に出回っている現金と金融機関が日銀に預けている当座預金の合計額で、日銀が供給する通貨を表す。マネタリーベース・日銀当預とも、黒田東彦前総裁による大規模緩和の下、供給が増大した。
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