- 2025/11/10 掲載
経済・物価「なお高い不確実性」、米経済下振れに警戒感=中川日銀委員
Takahiko Wada
[10日 ロイター] - 日銀の中川順子審議委員は10日、岡山市で講演し、経済・物価の先行きには「なお高い不確実性がある」と指摘。米国経済について「今後、関税の影響が物価や経済活動により大きく表れる可能性や、政府部門の雇用の大幅な削減や移民政策による労働供給の減少が成長を下押しする可能性がある」と警戒感を示した。
金融政策運営については、経済や物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると述べ、日銀の現在の基本方針を改めて説明した。
中川委員は注目するリスク要因として、米国経済の先行きのほかに、各国の通商政策の影響、企業の賃金・価格設定行動とその影響を挙げた。
米経済については、これまでの牽引役だったAI(人工知能)関連投資の成長期待が修正されることで「資産価格の大幅な調整や米国の景気が大きく減速する可能性にも留意が必要だ」とも述べた。
通商政策関連では、貿易対立の緩和で合意した10月末の米中首脳会談を「前向きな進展があった」と評価する一方で、「中国がその技術力と競争力によって、米国以外の国々に向けた輸出を拡大させることが、これらの国の企業業績を押し下げ、海外経済ひいては日本経済への下押し圧力となる可能性がある」とした。関税への対処で各国が財政拡張策を打ち出せば「想定よりも上振れる可能性もある」と述べた。
企業の賃金・価格設定行動について、これまでの物価高に対応して価格に転嫁する動きは「まだその過程にある」とする一方で、今後については強弱双方の可能性に言及した。労働需給の引き締まりの中で見通しより賃金上昇や賃金の価格転嫁の動きが強まれば、価格の上昇が「家計のコンフィデンスや予想物価上昇率に影響する可能性がある」と述べた。一方で、需要が弱まれば価格転嫁は難しくなり、「業績への下押し圧力からコストの削減の方に強く傾くことになれば、賃金に物価上昇を反映する動きが弱まる可能性がある」と話した。
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