- 2025/12/19 掲載
情報BOX:次期FRB議長有力候補3人、その政策観や経歴は
[ワシントン 18日 ロイター] - トランプ米大統領は、来年5月に任期が終わるジェローム・パウエル氏の後任となる次期米連邦準備理事会(FRB) 議長候補として ケビン・ウォーシュ元FRB理事、ケビン・ハセット国家経済会議(NEC)委員長、クリストファー・ウォラーFRB理事の3人に面接した。3人は、さらなる政策金利引き下げが望ましいという考えでは足並みを揃えるが、金融政策に関するその他の部分では意見に差があり、経歴もばらばらだ。
ウォーシュ氏はトランプ氏との関係が緊密と言える。もう一人の「ケビン」のハセット氏は、トランプ政権の1期目と2期目を通じて同氏の政策をてこ入れする人物だ。ウォラー氏は、既にFRBの利下げ路線を主導する役割を果たしている半面、FRBの活動範囲拡大には慎重な姿勢が強い。
トランプ氏がFRBに不満を抱く最大の理由は利下げが足りないことだが、3人は利下げを進めるべきという考えで共通する。そのほか、人工知能(AI)がインフレを生み出すことなく経済をより生産的にして、成長を加速させることができるとの見方でも一致している。
ただ最近の発言をたどると、利下げのペースや最終到達点、またFRBのバランスシート運営、FRBの組織運営に関する見解には幾分違いが見える。
次期議長候補3人の経歴や政策金利、バランスシート、FRBの文化などについての見解を以下にまとめた。
<ハセット氏>
経済博士号を持つハセット氏(63)は1990年代をFRB職員として過ごした後、シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所に入り、税制やサプライサイド経済学の研究に注力した。
ハセット氏は、ITバブル破裂直前の1999年に出版した共著で米国株が著しく過小評価されていると論じたことや、第1次トランプ政権時代に新型コロナウイルスのパンデミックはすぐ自律的に収束するとの見方を示した。このため、同氏の分析力に批判もある。
第1次トランプ政権で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めて以来、トランプ氏との関係を維持。2020年の大統領選後はトランプ氏の娘婿クシュナー氏が率いる投資会社の顧問となった後、第2次政権でNEC委員長としてホワイトハウスに戻ってきた。3人の次期議長候補の中で、ハセット氏は自らが策定に携わったトランプ政権の各政策がもたらす効果について最も強気な見方をしていると言ってよい。
利下げに関しては12月8日の会合で「大きな利下げ余地があると思う。生産性向上に資本ストックの伸びを加味すると、基調的な潜在国内総生産(GDP)成長率は3%超か、多分4%超になっているように見受けられる」と発言した。
FRBバランスシート問題ではハセット氏は今のところ詳細なコメントは残していない。もっとも政権中枢の人物、特にベセント財務長官はFRBの資産保有を権限の過剰行使の表れとして否定的にみている。
FRBの文化については12月8日にFOXビジネスのインタビューで「取り組むべき課題は数多くあり、それを新しい人材で修正するか、運営方法の新しい考え方で修正する必要がある」と語り、FRBが党派的だとする意見や、調査研究の軸が革新的な問題から外れている点、12地区連銀総裁の仕事ぶりを改めて検証するべきことなどに言及した。
<ウォラー氏>
ウォラー氏(66)は3人の中で中央政界との距離が最も遠い。中西部ネブラスカ生まれで経済博士号を持ち、ノートルダム大学で教職に就いた後、09年にセントルイス地区連銀の調査ディレクターとなった。
金融政策に関する幅広い著作があり、20年にトランプ氏によってFRB理事に起用されてからは、そうした経歴を生かして金融政策の議論を、理論や経験的分析に基づくものにすることに貢献した。そのおかげでFRBは22年にインフレ抑制のため利上げペースを速め、最近では雇用市場が弱まっている証拠を受けて利下げを開始している。
ウォラー氏が次期議長になる可能性は、トランプ氏と個人的つながりがない点や、トランプ氏が17年に当時理事だったパウエル氏を議長に昇格させた自らの人事が裏目に出たと感じている可能性を考えると低くなる。
ただ金融市場に影響を与える現職の政策担当者として、問題や見通しに触れる発言は3人の中で最も正確で、それが同氏を慎重居士に見せている面もある。市場では、そうした姿勢やトランプ氏から独立している立場から最も好ましい選択肢と受け止められている。
政策金利については12月17日に、現在の水準は「中立金利まで50-100ベーシスポイント(bp)の開きがある。まだある程度動ける余地があり、利下げは可能だ」と述べた。
同じ日にバランスシートを巡って「長期的には貨幣需要、その後は銀行の準備需要に起因する形でバランスシートは拡大している。恐らく(現状は)FRBにとって望ましい規模近くになっているだろう」と説明した。
FRBの文化についてウォラー氏は、ハセット氏やウォーシュ氏と異なり、党派性が足かせになっているとは見なしていない。連邦公開市場委員会(FOMC)の決定には賛成票、反対票どちらも投じてきた。FRBが「使命を逸脱」しているとの懸念は共有しており、社会問題で注力する分野を絞り、職員を削減する取り組みを進めてきた。
<ウォーシュ氏>
ウォーシュ氏(55)は弁護士資格を持ち、過去の共和党政権に参加した。現在は投資会社スタンレー・ドラッケンミラーの顧問や、スタンフォード大学フーバー研究所の客員研究員(経済学)を務めている。義父のロナルド・ローダー氏はトランプ氏の初期の支持者で、ウォーシュ氏は第1次トランプ政権でFRB議長の最有力候補と目されていた。
06年から11年までFRBの理事で、当時のバーナンキ議長からウォール街との有効なパイプ役と評価された。しかしバーナンキ氏が導入した大規模な国債買い入れに反対し、最終的に辞任している。
それ以来ウォーシュ氏はずっとFRBに批判的だったが、今回次期議長候補として浮上するとともにその批判は鋭さを増した。「体制転換」や「徹底的な改革」といった強硬発言もしているが、具体的な内容は示されていない。
政策金利については今年10月24日、大幅に引き下げることで期間30年の固定ローン金利を低下させて住宅取得コストを手頃にできると主張。大統領が許容した技術革命や国内外からの巨額投資と低金利が相まって、生産性革命の素地になるとの見方を示した。
バランスシートの面では今年4月25日に「(資産保有は)FRBの経済に対する影響力の強まりの象徴で、FRBが行動するたびにその規模と範囲が拡大し、他のマクロ経済領域に踏み込んでいく」と批判した。
同じ日にFRBの文化について「現代の中央銀行はいささか禁じられた領域に手を出し過ぎているように見える。『気候変動』や『包括性』は政治的に敏感な問題で、善意の人々にはそれぞれの見解や動機がある。しかしFRBにはこれらの分野で政治的判断を下す専門知識も権限もない」と指摘した。
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