- 2026/03/09 掲載
女性特有の「がん」に負けない=治療も仕事も、広がる企業支援―国際女性デー
がんになった社員らに対し、治療と仕事の両立を支援する企業が増えている。2人に1人はかかる時代と言われ、とりわけ乳がんや子宮頸(けい)がんなどの女性特有のがんは働き盛りに多い。企業は制度を整備するとともに、「がんへの理解と相談しやすい雰囲気づくりが重要」(大和証券グループ本社)と、啓発活動に力を入れている。
◇乳がん、最初のピークは40代
「娘を悲しませたくない」。東京都内の不動産関連企業に勤める49歳の女性は、2年前に乳がんと診断されたときにそう思った。高校生の娘と2人暮らし。「しっかり治療し、収入のために仕事も続けなくては」と自分に言い聞かせた。
手術後は在宅や時短と無理ない範囲で働きつつ通院治療。切除した乳房は「やはり無いと嫌」と再建した。今や親子げんかも復活するほど元気。「職場の制度や同僚に助けられた」と振り返る。
国立がん研究センターの統計によると、多くのがんが高齢になるほど罹患(りかん)率が高まるのに対し、女性の9人に1人がかかるとされる乳がんは最初のピークが45~49歳。子宮頸がんは40~44歳と、仕事や育児の真っただ中になる人も多い。
◇知って不安を軽く
医学の進歩で、がんは早期発見すれば多くは治療できる。ただ、診断されれば誰もがショックを受ける病でもある。
「仕事を辞める必要はないことを伝える」「病気の情報共有の範囲の確認を」。大和証券グループ本社は、店長や部長に対し、社員からがんの報告を受けた際の対応マニュアルを渡している。就業形態の変更や治療費の貸し付けなど、社内制度を日常的に全社員に周知。担当者は「いざ、がんになっても慌てないよう、会社としてサポートする姿勢を明確にしている」と説明する。
化粧品販売のポーラ(東京)は、がんの基礎知識や利用できる制度、闘病した社員の経験談を掲載した小冊子を社員だけでなく、フランチャイズ店の美容スタッフにも配布。来店客に早期発見の乳房チェックの方法を伝えるなどしている。
背景に、仙台市の店舗オーナー、伊藤千津子さん(72)の存在がある。ステージ4の乳がんで余命1年と告げられたものの、抗がん剤治療や手術を乗り越え、「社会とつながっていたい」と職場復帰。通っていた病院でハンドケアのマッサージのボランティアも始めた。
伊藤さんの姿は社内外のがん患者やその家族を勇気づけ、「ポーラが啓発活動を社外に広げるきっかけとなった」(広報)という。
◇「本人の意向」尊重
ファミリーマート執行役員の島田奈奈さん(57)も乳がんを経験したサバイバーだ。管理職だったこともあり周囲に状況を説明し、治療しながら仕事を続けた。そんな島田さんの元にはがんに罹患した社員が相談に来ることもある。
多くは、がんをまだ受け入れられない、周囲に気を使われ過ぎたくないといった理由で公表しないという。島田さんは「病状は人それぞれだが、がんのイメージがまだ重い。周囲の受け止め方も千差万別」と理解を示す。
がん治療を含め、社員の多様なキャリア相談に応じる体制を整えている伊藤忠商事は「本人の意向が最も重要。大変だろうと一方的に業務を減らしたり、安易に在宅を勧めたり、本人のキャリアの停滞や孤立を招かないようにすべきだ」としている。
【編集後記】医療の進歩により、高齢者を除けばがんで死亡する人の割合は減っているという。しかし、イメージは大きく変わっていないように感じる。テレビなどで病状の重い人ばかりが目に入ってくるからだろうか。誰もがなる可能性があるのに、がんを理解していないことも一因だろう。正しく知ることが予防になり、病への偏見を取り除き、病を得た人の両立を手助けすることにつながる。まず知ることから始めたい。(時事通信経済部記者・藤田綾)。
【時事通信社】 〔写真説明〕国際女性デー2026 〔写真説明〕オンラインでインタビューに応じるポーラ店舗の伊藤千津子オーナー=2月12日 〔写真説明〕インタビューに応じるファミリーマート執行役員の島田奈奈さん=2月6日、東京都港区
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