- 2026/04/08 掲載
アングル:スペースXの大型IPO、投資需要吸収され他社は上場困難に
[7日 ロイター] - 米実業家イーロン・マスク氏が率いる宇宙開発企業スペースXが近く大規模な新規株式公開(IPO)を実施する一方、年内の上場を目指している他の企業は、華々しいデビューを飾るスペースXの影に隠れる形となって自社の上場が困難になるかもしれないと懸念を強めている。スペースXはIPOで最大750億ドルを調達する可能性がある。
ロイターが取材したアナリストや業界専門家は、スペースXのIPOは投資需要の大部分を吸収して上場予備軍の他社を市場から締め出す公算が大きいと指摘。定評のある米国株式市場の厚みが厳しく試されることになりそうだ。
ルネッサンス・キャピタルのシニアアナリスト、マット・ケネディ氏は「過去を振り返ると、スペースXのような超大型IPOは市場の『酸素』を吸い尽くしてしまうことが分かる」と指摘。「IPOは重要な市場イベントであり、企業はスペースXの上場から生じる雑音によって自社のディールがかき消されてしまう事態を望まないだろう。このためスペースXのIPOの前後数週間は、上場活動は少々弱まるかもしれない」と述べた。
企業はIPOが枯渇した局面を受け、好ましいIPO環境を求めて何年間も様子見を続けてきた。それだけに、スペースXのような企業の上場は、有名人である富豪が最高経営責任者(CEO)を務めている点のほか、注目度の高い業界であり、手厚い資金を提供できる支援者といった好条件がそろい、他社がIPOを進めるのに必要な勢いを提供する可能性があった。
しかし、ウォール街の銀行と投資家が自分たちの注意と資金をスペースXに注ぎ込む中、スペースXの大規模なIPOは他社に暗雲をもたらしている。
ルネッサンス・キャピタルによると、今年これまでに価格設定されたIPOは35件と前年同期比37.5%減少した。状況は向こう数カ月にわたって一段と悪化する可能性があり、今年はIPO市場が幅広く回復するとの期待に影を落としている
アナリストや銀行関係者の話では、IPO市場では過去数十年で最も多数の企業が上場を予定している。
だがイランにおける戦争とそれに伴う原油価格の高騰、プライベートクレジットを巡る懸念、人工知能(AI)が旧態依然としたソフトウエア会社にもたらした混乱により、どの企業が不安定な局面を乗り越えてIPOを成功させられるか、どの企業が置き去りにされるかの明暗を分ける高いハードルが設定された。
IPOを目指している企業は現在、こうした混乱に加え、スペースXに関する報道に圧倒されている市場で、注目を集めるために競争しなければならない。
上場を成功させるには、企業のファンダメンタルズ(基礎的条件)と同様、IPOのタイミングが極めて重要となることが多い。5月から6月にかけては通常、夏場の停滞期間を控えて、最も好ましいタイミングだ。
銀行関係者によると、マスク氏はスペースXの上場を6月に実施する意向だ。AI開発企業オープンAIと同業アンスロピックは今年下半期の上場を目指していると報じられている。
ピッチブックのアナリスト、カイル・スタンフォード氏は報告書に「これらの超大型IPOが市場からの注目を集めることで、幅広いIPOの機会が2027年に先送りされる可能性がある」と記した。
報告書によると、スペースXは500億-750億ドルの調達を目指す一方、オープンAIとアンスロピックは合計で500億ドルを調達する方針。これらの調達額を合計すると、米国のベンチャーキャピタル(VC)の支援を受けた企業による過去10年間の調達総額にほぼ匹敵する。
スタンフォード氏は「これらの超大型IPOが吸収するのは、メディアの注目だけではない。これらの企業が調達できる資金の総額によって、IPOの引き受けも抑制されるだろう」と付け加えた。
ジョージタウン大学マクドナウ経営大学院の研究員、ジェームズ・エンジェル氏は「Xやスターリンクといった有名ブランドと、AIの魔力、宇宙空間の夢、マスク氏の魔法が組み合わさり、投資銀行は株式への興味を生み出すのにほとんど苦労しないだろう」と語った。
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