- 2026/04/10 掲載
アングル:ホルムズ封鎖で米国産石油の需要急増、精製大手が巨額の「漁夫の利」
[9日 ロイター] - イラン戦争による中東産原油の供給混乱が米国産燃料の輸出需要を押し上げ、メキシコ湾岸に位置する米国の石油精製業者はここ数年で最大の精製マージンを享受しているとアナリストや専門家はみている。
アジアや欧州の製油所は、イランのホルムズ海峡封鎖による中東産原油の輸出不振で大きな打撃を受けており、減産を余儀なくされている製油所もある。トランプ米大統領は7日、海峡交通の再開を条件にイランと2週間の停戦に合意したと発表したものの、タンカーの通航は依然として制限されており、不安定な休戦が維持されるかどうかについては疑問視する人が多い。
中東産原油への依存度が低い米国の精製業者は、メキシコ湾岸の拠点からの輸出を最大化することで、世界的な燃料不足を商機に変えられる極めて有利な立場にある。世界最大の石油製品市場である米国の精製能力は日量約1800万バレルで、その大部分がメキシコ湾岸の輸出拠点に集中している。
アナリストによればマラソン・ペトロリアム、フィリップス66、バレロ・エナジー、PBFエナジーといった主要な独立系精製業者は、米国最大の燃料輸送管であるコロニアル・パイプラインの起点に位置する。海上輸出ターミナルに直接アクセスできるため、今の市場環境における勝ち組となっている。
コンサルティング会社クリメル・ストラテジーの創設者ジェフ・クリメル氏は「米国の精製業者にとっては、原料調達を脅かされることなく、供給難に直面する市場へ商機を拡大できる絶好の機会だ」と指摘した。
米エネルギー情報局(EIA)のデータによると、3月の米国の製油所稼働率は92%近くまで上昇し、メキシコ湾岸の稼働率は前年同期の約90%から平均95%超に達した。これは、メキシコ湾岸の過去5年間の季節平均である約82%と比較しても極めて高い水準だ。対照的にアジアの製油所稼働率は3―4月にかけての減産により目に見えて低下し、80%台前半から半ばに落ち込んでいるとコンサルタント会社リスタッド・エナジーは分析した。
<輸出マージンの押し上げ>
船舶追跡データによると、3月の米国の石油製品輸出は過去最高を記録した。直近の数四半期は世界的な供給過剰により、石油会社が原油から石油製品を精製する際の粗利益にあたる精製マージンは圧迫されていたが、輸出の急増がこれを大幅に押し上げる結果となった。
輸出需要の高まりは、米国内の燃料価格上昇の一因にもなっている。国内価格も過去最高値圏にあるとはいえ、海外へ振り向けた方がより高い利益を確保できるという計算が働いている。
この現象は、ディーゼルおよびジェット燃料市場で最も顕著だ。中東は燃料や精製効率が良く収益性の高い原油の主要な供給国であるため、イラン戦争の影響を最も深刻に受けている。
米国の超低硫黄軽油(ULSD)先物は、米ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油先物に対し1バレル当たり72ドル超上乗せされた水準で取引されている。この上乗せ幅は、戦争前の約40ドルから大幅に拡大した。ガソリン先物の上乗せ幅は約26ドルと、これも戦争前の約18ドルから拡大した。
ストーンXのエネルギー市場戦略担当責任者、アレックス・ホーデス氏は「世界のディーゼル市場は堅調であり、メキシコ湾岸から海外へと燃料が吸い上げられ、米国内価格を一段と押し上げる要因になるだろう」と述べている。
<「防波堤」としての限界>
こうした追い風がある半面、世界的な需要増で原油価格は大幅に上昇しており、米国の精製業者にとってもコスト増が重荷となりつつある。
WTI原油のスポットプレミアム(現物取引価格への上乗せ分)は過去最高水準に跳ね上がっている。北アジア向けのWTIミッドランド原油(7月渡し)のオファー価格は、指標に対し1バレル当たり30―40ドルのプレミアムとなっており、3月下旬の約20ドルから上昇。一方、欧州への入札価格は北海ブレント原油先物に対し過去最高となる15ドル近くのプレミアムに上昇した。
市場関係者によるとアジアの石油精製業者も、これまで米国に流れていた南米産原油の獲得を狙っているという。
フィリップス66は6日、原油価格の上昇により、第1・四半期に税引前で約9億ドルの「含み損」を計上したと発表した。
これについてクリメル氏は「原油価格の上昇により、同社がかけていたヘッジ取引の評価額は一時的に目減りした。とはいえ、製品価格が跳ね上がった市場に対し精製製品の供給を加速させていくことで、それを補って余りある莫大な利益を手にすることになるだろう」と述べた。
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