• 2020/08/07 掲載

アングル:氷見野金融庁が始動、「銀行」・「現金」・「当局」の未来図課題

ロイター

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和田崇彦

[東京 7日 ロイター] - 金融庁の氷見野良三長官がロイターのインタビューで既存の仮想通貨の規制緩和を否定したことで、仮想通貨業界から落胆の声が上がった。しかし、日銀・財務省・金融庁の連携で中央銀行デジタル通貨(CBDC)が実現すれば、仮想通貨の価格上昇につながるとの期待もある。デジタル化の波で伝統的な「銀行」や「現金」に変化が迫る中、金融ビジネスの未来図作りも氷見野長官の課題となりそうだ。

<肩透かしの仮想通貨業界>

今日ある仮想通貨について、特別な振興策を取りたいということを考えているわけではない――。氷見野長官は5日のロイターのインタビューでこう述べ、仮想通貨業界からは「期待していたほどわれわれの業界にやさしいわけではない」(仮想通貨取引所の関係者)との声が上がった。

氷見野氏は昨年9月の講演で、フェイスブックが構想した仮想通貨リブラを「目覚まし時計」と表現。世界的に流通する可能性があるリブラの規制・監督を1つの主体が監督することの限界を説いた。こうした主張が、日本だけ規制が強まっていくと不満を持つ業界関係者には歓迎された。「氷見野氏はわれわれの苦しい業界環境を理解してくれるのではないか」(交換業者社長)との声が上がっていた。

しかし、氷見野長官は「ビットコインの規制緩和をどんどん進めても、投機的な取引が増えるだけであれば必ずしも技術革新を促進することにはならない」と話し、規制緩和が再び投機的取引を招くことへの警戒感を示した。

その上で「われわれが力を注いでいるのは分散型台帳技術」と指摘。「設計者もノード(ユーザー)もマイナーも世界中に散らばっていて、誰かが1人でガバナンスしているものではないというものが今後発達していったときに、公共政策目的とどうアラインしていく(整合的になっていく)のかということだ」と語った。

一連の氷見野長官の発言は、金融庁の従来のスタンスを踏まえたものだ。2018年のコインチェックでの仮想通貨流出事件以降、金融庁は仮想通貨業者への監視を強め、行政処分を連発して法令順守意識の醸成と銀行並みの体制整備を求めてきた。ビットコインの価格低迷とマネーロンダリング防止体制構築のための多額のコスト負担で、各社の業績は低迷した。マネックスグループ<8698.T>の傘下に入ったコインチェックが黒字化したのは20年3月期の第1四半期だ。

「仮想通貨」という名称が「通貨に準じる存在」との誤解を生み、投機的な取引を助長したとの反省もあり、金融庁は資金決済法を改正し、仮想通貨の名称を「暗号資産」に変更した。

<中銀デジタル通貨は仮想通貨には追い風>

一方、氷見野長官は日銀が検討を進める中央銀行デジタル通貨(CBDC)に理解を示し、日銀や財務省と連携していくと述べた。

マネックスの松本大社長は「CBDCが実現すればインターオペラビリティ(他のシステムとの相互運用性)が格段に上がり、仮想通貨の価値も向上する」と指摘。CBDCが実現すれば、仮想通貨業界には追い風だとの見方を示している。

<銀行・現金・当局に変化の大波>

金融行政の体系化を進め、検査局廃止を実現した森信親元長官の「知恵袋」として、氷見野氏は存在感を発揮した。関係者によれば、森氏が長官時代に英語で行ったスピーチには氷見野氏のアイデアが多く盛り込まれているという。

銀行、現金、規制当局という3つの古き良き制度(institution)は近い将来、大きな変革を経験しなければならない――。氷見野氏はリブラを目覚まし時計と表現したスピーチでこう述べた。

政府は成長戦略の原案に銀行間手数料の引き下げや、銀行ではない決済サービス事業者の全銀システムへの参加を盛り込んだ。

デジタル化の波はグローバルに押し寄せている。ブロックチェーンの普及の先に伝統的な銀行が生き残っていけるのか、各国の当局がどう連携して金融システムを守るのか――。新型コロナ対応を最優先に掲げる金融庁の目の前には、こうした課題も横たわっている。

(和田崇彦 編集:石田仁志)

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