• 2020/11/27 掲載

アングル:ビットコイン再び高騰、「もうけ損ねた」投資家の本音

ロイター

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[ロンドン 25日 ロイター] - ニューヨーク在住で起業家と作詞家という2つの顔を持つアリアナ・オーデルさん(30)は、4年間にわたる暗号資産(仮想通貨)ビットコインへの投資で大変な浮き沈みを経験した後、今年2月に保有分を全て売り払った。

この間にビットコインの価格は、1000ドル弱から2万ドル近くまでの範囲で変動。オーデルさんは最適なタイミングでの売買に失敗したかもしれず、最近の値上がりでもうけるチャンスも逃してしまった。だが、悔いはないという。

オーデルさんは、売却で得た2705ドルを自分の事業につぎ込めたことは、たとえ売った時点から今の価格が2倍になっているとしても、それまで毎日乱高下を目にして感じるストレスに耐えるより、ずっとましだと断言。「正直に言うと、仮想通貨投資よりもラスベガスで、もっと大きな幸運を手にしたことがある」と打ち明けた。

彼女は、数年前に仮想通貨市場に参入した比較的新しい個人投資家の1人だ。こうした個人投資家は、過去にビットコインが2万ドルに迫る水準まで高騰した局面で、買いをけん引した。

ところが、その多くは高騰後の不安定な値動きに神経が持たず、もう価格が持ち直すことはないと見切りをつけて、手持ちのビットコインを処分して足元の上昇相場から疎外されている。

ビットコインは今年に入って約160%上がり、25日には1万9239ドルと、2017年12月に付けた1万9666ドル前後の最高値に接近した。

ただ、仮想通貨市場の大きな部分を占め、ソーシャルメディアや投資フォーラムにおいてアドバイスを共有してきたこうした「アマチュア投資家」は、現在の価格高騰の主役ではない、と専門家はロイターに解説する。

機関投資家に仮想通貨などのインフラサービスを提供するステークドのティム・オギルビー最高経営責任者(CEO)は「今回の上昇は機関投資家の買いが主導している」と語る。

その上でポール・チューダー・ジョーンズ氏やスタンレー・ドラッケンミラー氏らヘッジファンド・マネージャーが、彼らの幅広い戦略の一環としてビットコインを組み込んでいると付け加えた。

一方、オーデルさんをはじめとする何人かの個人投資家は、さっさとビットコインを売却したことで、共通した感慨を持った。すなわち「ほっとした」という。

ニューデリーの起業家、アクラム・タリク・カーンさん(25)は17年にビットコインを購入し、ピーク時の資産は16万ドルに達した。だが、その後に価格が半減したことで真っ青になり、売りに動いたため、結局1万ドルの損失を被った。

カーンさんは「今にして思えば、持ち続けるのが正解に思える。でも、ずっと高い価格で買った商品が値下がり続けるのを見る場合、心理的な悪影響が出てくる。ビットコインが1000ドルまで下がって、もう二度と反発しないようなこともあり得た」と話す。

<期待リターンゼロ>

仮想通貨投資はルーレットゲームに似ている、と一部の専門家は指摘する。誰も何が起きるか本当に分からないからだ。ビジネストレンドや中央銀行の決定が価格に影響を及ぼす株式や債券と異なり、暗号資産の価値は、今なお謎に包まれている。

資産の価格が突然暴落する、あるいは何年か停滞している局面でも、アナリストがその原因を正確に突き止めることはめったにない。

これには、大物投資家さえ困惑を隠せない。ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は先週、投資していたビットコインを18年に売却して約5000万ドルの損を出したと明らかにするとともに、多くのプロ投資家の思いを代弁する形で、最近の値上がりに伴う収益機会を逃したことに、何の後悔もないと言い切った。

あるイベントの場で「今の価格は私が売った時より、多分高いだろう。しかし、少なくとも私が理解できないものに頭を使う必要がないので、気分ははるかに晴れやかだ」と公言している。

香港科学技術大学のマイケル・エデセス准教授(非常勤)は、ビットコインを「あまり合理的な投資手段ではない」とみなす。自身のようなエコノミストや数学者からすると、ビットコインは「期待リターンゼロ」、つまり値上がりと値下がりの確率は同じだ。

個人投資家の場合、「HODL(13年にあるユーザーがholdのつづりを間違えて投稿したのがきっかけで生まれた仮想通貨の長期保有を意味する言葉)」の精神を守ってビットコインを手放さなかった向きもいるが、手っ取り早くもうけようと高値付近で買ってしまった人も少なくない。

<今度こそ>

仮想通貨市場で個人投資家と機関投資家の比率が、正確にどの程度かを把握することはできない。取引が匿名である上に、交換所はユーザーの詳しいデータを共有していないからだ。

それでも多くの専門家は、今年は以前に比べて機関投資家の役割が増大しているとみている。新型コロナウイルスのパンデミックに対応して未曽有の規模で景気刺激策が打ち出され、リスク資産の引き合いが高まっていることや、ビットコインを決済手段として受け入れる動きが広がるとの期待が背景にある。

機関投資家を引きつけるような市場構造の改善や、グーグルで「ビットコイン」検索件数が減ったことも指摘されている。こうした検索件数は、個人投資家の取引が活発化すると増加しがちだ。

とはいえ、小口の一般投資家はバブル真っ盛りで参入してくる傾向があると言われているので、今後は個人によるビットコイン投資の新たな波がやってくるかもしれない。

例えば、ロンドンの音楽家、リビ・モリスさんのケース。彼女は18年1月にビットコインを買ってすぐ資産価値が7─8割目減りした。今年6月まで持ち続けたものの、購入価格と比べればすずめの涙ほどの水準で売却し、早まった決断を残念がったが、ここ数週間でまた、仮想通貨を買い始めている。

大口投資家が市場に入ってきたのを目にしたためで、より供給量の少ない仮想通貨に狙いを定めたモリスさんは「17年に投資した際には、暴落が来るとのうわさがしきりだった。時代は変わったみたいだ」と述べ、今度の投資はうまくいくと期待を膨らませている。

(Anna Irrera記者)

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