- 2020/11/30 掲載
焦点:最高値更新の米株市場、一段高は来年の業績回復次第
リフィニティブのIBESのデータによると、アナリストは今年のS&P総合500種の構成企業の利益が新型コロナ禍で15%超減少するが、来年は23%増加に転じると見込んでいる。
同500種企業で予想される向こう4四半期の利益に基づく株価収益率(PER)は現在23倍。今年6月に記録した約20年ぶりの高倍率の25倍から、まだわずかに下がっただけだ。リフィニティブのデータによると長期平均は約15倍で、これを大きく上回る。企業利益面の裏付けは弱いにもかかわらず、米株は今年3月以降に急上昇し、PERも大きく押し上げた。
実際のところ、米株上昇は全米での新型コロナの感染再確認や、来年の企業利益見通しの若干の低下にもかかわらず実現した。リフィニティブのデータによると、S&P500種企業の来年の利益予想は今月27日時点で22.5%増と、10月1日時点の28%増から弱まっている。
調査会社アーニングス・スカウトのニック・ライチ最高経営責任者(CEO)は「相関関係がなくなっている」と指摘。「次の2つのうち一つが起きるに違いない。企業収益予想が株価に追い付くか、企業収益予想が相応に高まらずに株価が下がるかのどちらかだ」とした。
BofAグローバル・リサーチの戦略責任者、サビタ・サブラマニアン氏の来年の市場予想リポートによると、コロナによるロックダウン(封鎖)の長期化が、株に短期的な下落リスクがあるとみる理由だ。
一方、来年の企業収益を巡る予想コンセンサスは回復の可能性を過小評価しているとの見方もある。
ルートホールド・グループの首席投資ストラテジスト、ジム・ポールソン氏は「企業にはひたすら存続を図るだけだという意識が強い」と指摘し、これが企業による事業の縮小につながっていると分析した。「もし企業が成長を取り戻せば、かつてないほど利益が大きく戻ることになる」とみる。
リフィニティブのデータに基づいてS&P500種企業全体の97%を分析したところ、第3・四半期はわずか6.5%の減益となり、10月1日時点の予想21%減から大きく改善した。第4・四半期の見通しは11%減益で、10月1日時点の13.6%減から上方修正されている。
ただアナリストによると、新型コロナワクチンの本格接種のタイミングに左右される面も大きい。どれだけ企業活動が素早く正常化するかが、これにかかっているためだ。
来年に最も利益が前年比で伸びるセクターは景気敏感株とみられている。リフィニティブのデータによると、増益率はエネルギーが600%近く、工業が79%と予想されている。
米大統領選で勝利したバイデン氏の政策が市場寄りになるかどうかも投資家は見極めようとしている。バイデン氏は増税の可能性を示しており、そうなれば企業利益の伸びは抑制されるかもしれない。
ロイターが25日公表した調査によると、ストラテジストの大半は1年以内に企業利益がコロナ前に戻ると予想したが、増税になれば回復にもっと時間がかかるとの見方もあった。
(Caroline Valetkevitch記者)
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