- 2020/12/09 掲載
アングル:期待値上がったECB追加緩和、10日打ち出す具体策に注目
何より南欧諸国の国債利回りが過去最低圏まで下がっているのは、ECBが債券買い入れ強化を発表すると投資家が確信していることを示している。
以下は市場に存在する5つの疑問だ。
(1)パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)は拡大、延長されるか
簡潔に言えばイエスだ。
ECBはPEPPと銀行向け低利資金供給の拡充を示唆してきており、具体的な中身が今回議論されるのは間違いない。
多くのエコノミストは、ECBが現在1兆3500億ユーロというPEPPの規模を5000億ユーロ増額し、少なくとも半年間、来年末まで延長すると見込んでいる。
1年間の延長も検討されるかもしれない。
(2)貸し出し条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)はどうなるのか
ECBの緩和政策でもう1つの柱となっている銀行向け低利資金供給手段のTLTROも強化されるだろう。
既にTLTROの最低適用金利はマイナス1%まで引き下げられ、期間も2年から3年に延ばし、深刻な景気後退下でも銀行が進んで企業融資に動ける環境が整えられてきた。
エコノミストは、この寛大な条件の適用範囲がさらに広がると予想する。
ECBは担保適格基準の緩和を来年9月以降も延長することや、金利階層化措置を再調整して銀行に対するマイナス金利の悪影響を一段と和らげることも議論する可能性がある。
(3)ECBは通常の資産買い入れプログラム(APP)を緩和手段として検討するか
APP拡充は完全に否定できないが、PEPPが引き続き主要な緩和手段となるだろう。
最近のリポートによると、政策担当者の間では、かつてないほどの柔軟性を持つPEPPと、加盟国の出資比率に比例した買い入れが必要なAPPのどちらを拡充すべきか議論を行ったもようだ。
債務の多い国に対して、相対的に条件が厳しいAPPを通じた支援をECBが実施した場合、これらの国は欧州連合(EU)が設定した生産的投資のための融資供与を積極的に申し込んでもおかしくない。
EU各国が財政支援に乗り出すのを後押しする面もあるだろうが、7500億ユーロの復興基金はハンガリーとポーランドの反対で手続きが止まっているため、資金提供が遅れるとの懸念が高まっている。
(4)ECBはユーロに関してどのような懸念を持っているか
ユーロ高騰はECBの取り組みに困難をもたらしている。輸出に打撃を与えるほか、物価の下押し圧力となりかねないからだ。恒常的な弱気トレンドの様相を呈してきたドルに対して、ユーロは1.21ドル超と2年半ぶりの高値に迫り、実効レートも11年ぶりの高値が目前だ。
市場のユーロ買い持ち規模は、9月の高騰局面に比べるとそれほど膨れ上がっていない。このため今年の大半の期間、米国に見劣りしていた欧州の経済サプライズ指数が足元で逆転してきた中で、ユーロには一段の上昇余地があることがうかがえる。
VTBキャピタルのグローバル・マクロ・ストラテジスト、ニール・マックノン氏は、1.20ドルを超えるユーロ高はECBにとって懸念要素になりそうなので、今週の理事会で議題に上り、何らかの対応があるだろうとみている。
(5)最新の物価見通しは引き下げられるか
下方修正はほぼ確実視される。デギンドス副総裁によると、ECBはユーロ圏の物価上昇率が今年を通じて下落した後、来年は新型コロナウイルスワクチン期待が成長見通しを高めてもなお、以前想定したよりも緩やかにしか持ち直さないとみている。
副総裁の発言に基づくと、物価見通しは引き下げられる公算が大きい。
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