- 2020/12/21 掲載
焦点:米株高はバブルなのか、FRB議長も論争に参戦
S&P総合500種は年初来で15%上がり、リフィニティブ・データストリームによると、収益予想に基づくPER(株価収益率)は22倍と過去平均の15.3倍より大幅に高い。同指数の28%近くを占めるハイテクセクターのPERは26.4倍で、この過去平均は20.6倍だった。
強気派は現在の水準を妥当と主張。新型コロナウイルスワクチンの普及が経済活動再開を後押しするとの期待に加え、利回りが極端に低い今は債券などに比べて株式の方が資産として魅力がある点も理由に挙げる。
一方、米国株の幾つかの部分は既に過大評価の領域に入っているとの反論もある。グリーンウッド・キャピタルのウォルター・トッド最高投資責任者は「全体的に(株式のバリュエーションは)過去と比較して高まっている。市場の特定の分野にバブルが発生しているのは間違いない」と述べた。
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長もこの論争に参戦した。16日の連邦公開市場委員会(FOMC)終了後の記者会見では、「リスク・リワード(リスクの報酬)」の観点からは今の株価は買われ過ぎではないと語り、大規模な債券買い入れで経済を引き続き支えていくと約束した。
S&P総合500種が3月に記録した底値からの上昇率は66%にもなり、17日には過去最高値を更新した。直近の失業保険新規申請件数が予想外に増加するなど、景気回復を示す材料が次第に乏しくなってきている中での話だ。
足元の株価水準に懐疑的な向きは、電気自動車(EV)メーカーのテスラが今年680%も値上がりしたことや、暗号資産(仮想通貨)ビットコインが初めて2万ドル台に乗った現象、特別買収目的会社(SPAC)に資金が流れ続けている事態などが、投資家の行動がバブルのようになっている証拠だと指摘する。
またバンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチの調査では、猛烈な株式投資意欲を持つファンドマネジャーの現金保有レベルが非常に低下しており、同行のモデルにおいてこれは株式の「売り」シグナルに当たるという。
ただFRBのパウエル氏は16日の発言で、PERは「歴史的高水準」にあるとしながらも、「株式リスクプレミアム」の点では信じられないほど低いわけではなく、その面で株価が過大評価されているとは言えないと強調した。
トゥルーイスト・アドバイザリー・サービシズのチーフ市場ストラテジスト、キース・ラーナー氏によると、米株の益回りと米10年国債利回りを比較したリスクプレミアムは、株式に軍配が上がる。株式が現在のリスクプレミアムを保っている場合、S&P総合500種のその後12カ月のリターンは、米10年国債を10.3%上回るというのが過去のパターンだという。
ラーナー氏は「株式市場が非常に高い評価になっているという人も正しい。(しかし)われわれの考えでは、株式市場に相対価値があるという人もまた正しい」と説明した。
JPモルガン・プライベート・バンクも最近のリポートで、配当や企業利益、キャッシュフローの利回りが債券利回りよりずっと高いので、株式は相対的な妙味を持っているように思われると分析。「株価が割安だと思われていないとしても、来年も債券とキャッシュをアウトパフォームする公算が大きい」と述べた。
さらにラーナー氏は、いざ景気が回復したあとの数年間で起き得る企業利益の上振れを、バリュエーション関連指標がまだ十分に織り込んでいない可能性があると指摘、その点も株価の支援要素だとみている。
一方、プルデンシャル・ファイナンシャルのチーフ市場ストラテジスト、クインシー・クロスビー氏は、現在のバリュエーションがS&P総合500種でウエートが高い大型株によって偏った形で上昇している、と指摘する。
同氏はむしろ、パンデミックに起因する経済活動停止で打撃を受けた航空、宿泊、不動産といった業種にこそ妙味があると主張。これらの「ほとんど眠っている」企業は現段階で、どんな尺度で考えても割高化しているわけではないと強調した。
(Lewis Krauskopf記者)
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