- 2021/01/19 掲載
アングル:米次期政権、金融当局トップに強硬派 ウォール街に逆風
この人事は、新政権のウォール街への姿勢が大方の予想よりも厳しいものとなることを意味し、ウォール街は今後4年、逆風にさらされる見込みだ。
プログレッシブ(進歩派)は気候変動と社会正義に関する政策課題の推進においてSECとCFPBを重要視している。
ウォール街寄りの共和党員らは、今回の人選を左派への迎合と批判し、争いの元となると警告する。
下院金融委員会の共和党トップ、マクヘンリー議員はチョプラ氏の指名について「バイデン政権は極左メンバーに迎合している」と指摘。SEC委員長に指名されたゲンスラー氏に対しては「経済と無関係の問題や社会問題を是正するために証券開示制度を利用する圧力に抵抗すべき」と警告した。
ゲンスラー氏は2009年から14年まで米商品先物取引委員会(CFTC)委員長を務め、金融危機後に議会で策定された新たなスワップ取引規制を推進、バンカー出身ながら古巣ウォール街の強大な権益に立ち向かう厳格な規制当局者として知られる。
チョプラ氏は金融危機後にCFPBの設立を助け、CFPBで学生ローンの初代オンブズマンを務めた。また、FTC委員として、消費者のプライバシーや競争を巡りIT大手に対するルールの厳格化を主張、ルール違反の罰則強化を求めてきた。
<民主党の上院実質支配で強硬派人事が可能に>
11月3日の大統領選後、ジョージア州の決選投票で連邦議会上院の残り2議席が確定するまでは、共和党が過半数議席を維持する可能性がまだ十分あり、金融業界幹部はバイデン次期大統領が金融規制当局トップにより穏健派を指名すると期待していた。
だが、今月のジョージア州決選投票で民主党議員が2議席とも制し、上院の議席が民主・共和で半数ずつとなり、上院議長を兼務するハリス次期副大統領が賛否同数の際の決定票を握るため、上院は民主党が事実上支配することとなった。
上院で民主党が多数派となるのに伴い、反ウォール街の急先鋒として知られるシェロッド・ブラウン上院議員が上院銀行委員長に就任する。同氏は先週、トランプ政権下で規制当局が導入した規制緩和措置を撤回させる考えを示している。
ブラウン議員は18日、バイデン新政権が発表したチョプラ氏とゲンスラー氏の人事を歓迎した。
ゲンスラー氏はSEC委員長として、気候変動リスクや政治関連支出、労働条件や多様性の問題を巡り、企業に新たな情報開示を求めるほか、危機後の幹部報酬削減を徹底するとみられる。
一方、チョプラ氏は給料担保融資と債権回収のルールを見直す見込み。有力な消費者団体はこれらのルールが消費者を保護していないと訴えており、チョプラ氏がCFPBトップとして法外な高金利と悪質な債権回収手法をやめさせ、学生のローン負担軽減とマイノリティの融資アクセス改善に取り組むことを期待している。
ただ、当局人事刷新にあたり、バイデン氏はまずクラニンガーCFPB局長を大統領権限で解任する必要がある。最高裁は昨年、CFPB局長は大統領の裁量で交代させることができると判断した。
だが、消費者銀行協会のハント代表は、政権が変わるたびにCFPB局長が交代することは消費者にとって最大の利益にならず、規制の一貫性が保てないとして、大統領による解任権限の自動的な行使に強く反対している。
(Michelle Price記者)
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