• 2021/03/19 掲載

アングル:日銀の連続指し値オペ、緩和効果維持に活用 市場機能にリスク

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[東京 19日 ロイター] - 日銀は19日、長期金利の許容変動幅をプラスマイナス0.25%程度と初めて明確化する一方、連続指し値オペ制度を導入して過度な金利上昇を抑制する方針を鮮明にした。会見した黒田東彦総裁は緩和の効果を浸透させるため、金利の上振れには断固対処する姿勢を示した。しかし、運用の仕方によっては市場機能が損なわれるリスクもある。市場機能と低金利確保をいかにバランスさせるか、日銀が新制度をどう運用するか注目される。

<金利変動の高まりへの警戒感>

金利が上方に行って、金融緩和の効果が影響を受けてしまうのは絶対に避けなければならない――。黒田総裁は19日の記者会見で過度な金利上昇に強い警戒感を示した。

日銀は金融政策決定会合後に公表した声明文に初めて長期金利の許容変動幅を具体的な数値で明記し、「プラスマイナス0.25%程度」とした。同時に連続指し値オペの導入を打ち出し、行き過ぎた金利上昇は抑制に動く一方、下限を割り込む動きには寛容な態度を取り、上下非対称な対応を鮮明にした。

政策点検の「背景説明」では、「金利の大幅な変動は、経済・物価に悪影響を及ぼす可能性があるが、金利の変動が一定の範囲内であれば、金融緩和の効果を損なわず、市場の機能度にプラスに作用する」と指摘。金利変動の設備投資への影響分析について「長期金利の過去6カ月の変動域が50bpを超える場合を除けば、金融緩和が設備投資に影響を及ぼす度合いはおおむね不変」とした。

日銀内では、政策点検を前に金利上昇について「2つの側面」からの警戒感が浮上。連続指し値オペの創設につながった可能性がある。

1つは、停滞が続いていた日本の長期金利が米国の金利上昇に連動し始めたこと。日銀では、もし長期金利の許容変動幅を拡大すれば市場は金利上昇で反応するとの見方が出ており、3月期末を前に債券安・株安を招くわけにはいかないといった声が聞かれた。

もう1つは金利のボラティリティの拡大が金融緩和の効果を損ねることへの懸念だ。2月末、世界的に金利が急上昇する中で、一部の日本企業が条件決定が困難だとして社債発行を見送る事態に発展。日銀では、金利水準のみならずボラティリティにも注意が必要だとの指摘が出ていた。

<効果が出すぎてしまうリスク>

しかし、連続指し値オペは使い方によっては過度に強力なツールとなりかねない。野村証券のチーフ金利ストラテジスト、中島武信氏は「詳細は不明だが、それだけに金利上昇を抑える脅しともなる」と指摘する。「超長期金利に関しては、過度な低下が望ましくないという従来からの表現と変わらないため、長期金利が上昇しにくい分、超長期金利も上昇しにくくなるかもしれない」と話す。

日銀でも、臨時オペや指し値オペを打つと「効果が出すぎてしまう」ことへの警戒感が根強い。

今回の政策点検で日銀は国債市場の機能回復を目指した。これまで「プラスマイナス0.1%の倍程度」を許容変動幅としてきたものの、昨年6月以降は長期金利が停滞。こうした現状を打破する必要があるとの認識が日銀では強まっていった。

長期金利の許容変動幅の拡大観測に加え、米国の長期金利上昇により、日本の長期金利が一時0.175%まで上昇した際には日銀内でも警戒感が高まったものの、日銀は金利上昇を抑える動きには出なかった。金利が一段と上昇するリスクがぬぐえないが、点検結果の公表前に、買い入れオペに動けば金利水準に関する日銀の「新たな目線」となってしまう可能性があることを警戒したとみられる。

大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは、各国の金利に上昇圧力が掛かる中、「金利上昇を容認できるのは米国だけだ」と指摘。日銀が打ち出した連続指し値オペは「米国の金利上昇について行かせないためのけん制効果を狙ったものではないか」とみている。

市場機能の維持か低金利の確保か――。日銀の連続指し値オペの運用に注目が集まりそうだ。

(和田崇彦 取材協力:伊賀大記 編集:石田仁志)

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