- 2021/04/14 掲載
風評被害、漁業者に不安=政府、問われる説明責任―原発処理水
政府は東京電力福島第1原発から出る放射性物質トリチウムを含む処理水を海洋放出する方針を決定した。政府は安全性を確保すると強調するが、漁業関係者は水産物への風評被害が生じることに不安を募らせる。消費者が納得のいくような説明をできるのか、政府は責任を問われる。
福島県などは原発事故以来、漁獲した魚の放射線量を計測する調査を続けている。ここ5年ほど、国の基準値を上回る放射性セシウムが検出される割合は、ほぼゼロ。しかし、消費者庁が今年1月に実施した調査では、同県産の食品購入を「ためらう」と回答した人の割合が、いまだに8.1%に上る。
政府は、海洋放出の決定で新たな風評被害が生じないよう消費者団体や小売業界などへの安全性に関する説明会や、トリチウムの濃度を確認するモニタリング調査を行う。水産物の販路拡大支援は引き続き実施し、「追加の支援策を検討していく」(野上浩太郎農林水産相)方針だ。
福島県漁業協同組合連合会は、原発事故後の2012年から続けてきた漁獲量を制限して出荷する「試験操業」を今年3月末に終了したばかり。今後、段階的に水揚げ量を増やしていく方針だが、同県の漁業関係者は「魚を食べてもらえなくなる」と海洋放出決定による悪影響を危惧する。
海洋放出の決定は、農林水産物・食品の輸出振興にも影を落とす。政府は、中国や韓国など原発事故に伴う日本産食品の輸入規制を今も続ける15カ国・地域に対し解除を働き掛けている。しかし、「相手先の消費者が被災地に対するイメージを悪化させれば、撤廃は難しくなる」(協議担当者)と懸念され、対外的な説明も急務となる。
【時事通信社】
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