- 2021/07/01 掲載
焦点:ビットコイン、今年上期は波乱の展開
投資と商業取引で主流の座に向かうビットコインの動きは、大手金融機関がビットコインを受け入れる中で加速した。
こうした関心に支えられ、ビットコインの価格は4月に6万5000ドルに迫って過去最高を更新した。だがその後は最高値の半分近辺で推移。年初来では約20%の上昇となっている。
今年上半期のビットコイン市場の動きを振り返る。
1)変わらぬ不安定さ
ビットコインは発足から約13年間、激しい価格変動が顕著な特徴となっている。今年上半期は、市場における潤沢な流動性とインフラの強化により変動が小さくなると期待されたにもかかわらず、従来と同様に価格は激しく変動した。
ビットコインの価格は年初から4月中旬に過去最高の6万4895ドルを記録するまでで約2倍に上昇。その後は、世界各国の規制当局、特に中国当局がビットコインの取り締まりを強化したことが響き、わずか5週間で最高値の半分以下に下落した。
5月だけで35%下落し、月間では2018年以降で最大の下落率となった。先週には一時、1月以降で初めて3万ドルの節目を割り込み、年初来の上昇が帳消しになった。
JPモルガンのアナリスト、ニコラオス・パニギルツォグロー氏によると、ビットコインは第1・四半期に価格が急騰した後、多くの投資家が市場から撤退、一部の投資家は金市場へ移った。
同氏は「第2・四半期にビットコインの需要は価格に敏感に反応するようになった。一部の機関投資家は4月にビットコインから撤退し始めた。彼らはビットコインの価格が金と比べて高すぎると考えた」と述べた。
2)他の暗号資産との競合
年初来でみるとビットコインは暗号資産に関する報道の大部分を占める。しかし上昇率でみると、ビットコインより規模が小さい他の暗号資産がビットコインを上回っている。
規模が2番目に大きい暗号資産のイーサは価格が年初来で約3倍に上昇。「DeFi(分散型金融)」の台頭が価格を押し上げた。イーサが使用されているプラットフォーム「イーサリアム」のブロックチェーンが勢力を強める兆しが出ていることも、価格の上昇を促した。
7番目に大きな暗号資産のXRPも同様に上昇している。かつてはよく知られていなかったドージコインといった暗号資産も、上昇率がビットコインを上回っている。ドージコインは年初来の上昇率が5000%を超えている。
3)ミーム株との比較
今年は個人投資家によるビットコインの受け入れが進んだ。ビットコインはインフレに対するヘッジ手段になる、将来に支払い手段として使われる、などの説に個人投資家が引き寄せられたためだ。
価格の上昇をけん引したのは、暗号資産が急上昇する金融商品であるという認識だ。この認識は、金融市場で今年旋風を巻き起こした「ミーム株」にも当てはまる。ミーム株の価格はソーシャルメディアでの情報拡散によって急伸している。
ミーム株を代表する2銘柄のゲームストップとAMCエンターテインメントは、第1・四半期にビットコインと足並みをそろえて上昇。新型コロナウイルスの感染拡大を防止するロックダウン(封鎖措置)によって自由に使える資金と時間のある個人投資家がこれらの資産を買った。
だが、その後はミーム株の両銘柄とビットコインの価格は動きが乖離。年初来の上昇率はミーム株がビットコインを大きく上回った。ゲームストップは年初来で1000%余り上昇、AMCエンターテインメントは2500%超の上昇となっている。
暗号資産の取引を手掛けるLMAXデジタルのストラテジスト、ジョエル・クルーガー氏は「自由に使える資金の異常な動きが広がった」と指摘。そうした動きがいくらか暗号資産にも波及しているとの見方を示した。
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