• 2022/08/25 掲載

強力な金融緩和継続を、賃金の持続的上昇が重要=中村日銀委員

ロイター

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[東京 25日 ロイター] - 日銀の中村豊明審議委員は25日、福岡県金融経済懇談会であいさつし、現在の日本経済の状況を踏まえれば強力な金融緩和を粘り強く続ける必要があると述べた。実質国内総生産(GDP)が新型コロナウイルスの感染拡大前の2019年平均の水準を回復していないほか、欧米に比べ日本の物価高は程度や広がりが「大きく異なる」とした。賃金の持続的な上昇により、物価2%が達成されることが重要と強調した。

消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)は7月に前年同月比プラス2.4%となり、日銀が目標とする2%を4カ月連続で超えた。しかし、中村委員は、エネルギー価格の指数押し上げは今後は剥落すると想定されるため、物価2%目標を持続的・安定的に達成できる状況にないと語った。

コスト高で一部の価格が大幅に値上がりしている状況では「総需要を抑制する金融政策ではなく、対象を絞った政策対応が効果的だ」とも指摘した。

<賃金上昇継続へ、経営者の意識転換に期待>

中村委員は、賃金について重点的に話した。一部の品目の価格上昇に押し上げられて全体の物価が2%上昇しても「家計の可処分所得が向上しなければ、予算制約のもとで他の製品・サービスなどへの支出の減少を通じて物価全般の上昇が抑制され、経済活動が停滞し、結果的に賃金が抑制されて悪循環に陥る」と警戒感を示した。

今年の最低賃金が前年比プラス31円と3.3%上昇したことなどを挙げ、「人手不足感が続くもとで、経済活動全体の持ち直しを反映して賃上げの動きは広がりつつある」と指摘。賃上げ率の上昇が来年以降も持続していくには「冬季賞与と来年度の賃金改定はとても重要になる」と述べた。

また「構造的な課題が賃金上昇を抑制しているため、賃金上昇は依然として小幅にとどまっている」とも指摘した。1985年のプラザ合意や90年代前半のバブル崩壊など経営が試練に立たされる中で、企業は人件費などコスト改革でしのいできたと説明した。

コロナから経済が回復する過程で世界的にインフレ圧力が高まる中、足元では付加価値の向上とそのための賃上げを含む「人への投資」が「事業成長における重要な経営課題であるとの認識が経営者の間に広がりつつある」と指摘。「来年度以降も今年度を上回る賃金上昇が継続するモメンタムを形成するには、米欧に比べて大きく後れを取っている『人への投資』の活性化が重要」との見方を示した。

感染症拡大以降、欧米では産業間や企業間で労働移動を始めとする資源の再配分が進み、労働生産性の改善に寄与したとの分析が多くあると言及。日本は転職が活発ではなく「転職などを通じた資源再配分の進捗状況と労働生産性の改善ペースの違いは、賃金上昇率の違いにもつながっている可能性がある」と述べた。積極的な挑戦を促すセーフティネットや、持続可能かつ転職が不利とならない社会保障制度の整備など、制度面の改善も必要だと語った。

(和田崇彦 編集:青山敦子、田中志保)

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