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  • 【長嶺超輝氏インタビュー】日本の条例の奥深き世界へようこそ

  • 2010/01/15 掲載

【長嶺超輝氏インタビュー】日本の条例の奥深き世界へようこそ

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『47都道府県これマジ!?条例集』(幻冬舎新書)は、日本各地の多種多様な条例を紹介した一冊だ。こんな条例があったのか――と驚かされるものも多数ある。多くの人が知らないであろう一風変わった条例を一冊にまとめた著者の長嶺超輝氏に、その面白さなどをおうかがいした。

多様で個性的な条例の数々

――本書の帯にあった「おっぱい都市宣言」に心を惹かれました! 読んでいる最中もおっぱいまだかな? って思いながらページをめくっていまして……。

長嶺氏■
国内各地の条例や都市宣言といったローカルルールを探していったわけですが、やっぱり「迷惑防止条例」みたいなスタンダードなやつだけではなく、いろいろとはみ出している方が面白いですね。条例について調べていたら結構そういうのが多いことを発見しまして、山口県光市の「おっぱい都市宣言」は本当にいい例です。

――ちょっと抜粋して読みますね。〈「おっぱい」何と温かく、優しい言葉でしょう。「おっぱい」をとおした母と子の穏やかなふれあいは、真に生きる力を持つ、心豊かでたくましい若者を育ててくれることでしょう。そして、この若者たちが“母と子と父そして人にやさしいまち光”で子育てを楽しみながら、このまちに住み、まちとともに輝くことを夢みて、ここ光市を「おっぱい都市」とすることを宣言いたします〉。これが大好きすぎて、思わず朗読して音声をブログにアップしてしまいましたよ!

長嶺氏■
な、なんでまた?(笑)。この企画は他で見ないような条例などを、ネット上の例規集で調べていくうちに、それらを一冊にまとめたら面白いかなと思ったんです。それで各地の役所に電話で問い合わせたり。

【コラム】
『47都道府県これマジ!?条例集』
――条例ってもっと堅苦しいものかと思っていましたが、面白いですね。

長嶺氏■
法律の範囲内であれば、各エリアである程度好きに作れますから、びっくりするようなのも多いですよ。

――長嶺さんのお好きな条例を教えてください。

長嶺氏■
横綱は「おっぱい都市宣言」でしょう、外せないですよ(笑)。ほかには神奈川県真鶴町の「美の条例」。

――まちづくり条例の一つですね。

長嶺氏■
一般的な景観条例は、適正なビルの高さなどを数値で表すんですけど、この美の条例は、「豊かな植生」「血の生む材料」「小さな人だまり」「ほどよい駐車場」という風に、基準がアナログ的な表現なんです。

――確か「美の基準デザインコード」ですね。

長嶺氏■
そう! わざわざそんなものを定めているくらいなんですよ。

――好きな条例の基準みたいなものはありますか?

長嶺氏■
明確な基準はありませんけど、「なんじゃこりゃ?」と、心にモヤモヤを感じたら、とりあえずストックしておきました(笑)。

 あとは、どこのマネでもない地域振興策を果敢に遂行している自治体は好きです。茨城県大子町は「ふるさと農園に関する条例」で、300坪の土地を無料で一般の人へ貸して町おこしをしようとしてるんですが、公有地を貸すには議会の承認がいるといった法律の壁がたくさんあって大変だったみたいです。

――そこら辺がお気に入りですか。

長嶺氏■
そうですね、他には少年少女たちへの食育を推進する「朝ごはん条例」(青森県鶴田町など)も、かつては珍条例でしたが、最近は他の自治体にもじわじわと広がりをみせているようです。

――僕は岩手釜石市の「しいたけ経営改善資金利子補給費補助要綱」を見て思わず突っ込みましたよ、長いよ!って。しいたけ農家が県から借り受けた資金の返済について、利息分を市町村が一部立て替えるという真っ当な内容なんですけど。会議でこの条例が出てくる時に噛まずに言えるかなぁ、って勝手に想像しました。

長嶺氏■
噛んでも別にいいんじゃないですかね(笑)。

――あと自分の出身地が宮崎なので、高千穂の「家族読書条例」なんかも興味が湧きました。

長嶺氏■
私は長崎の生まれなんですが、九州はハジけたのがあまりないんですよ。東北地方などは結構インパクトのある条例が多いんですが、南に行くにつれて薄くなってくる(笑)。沖縄まで行くとまた少し違いますけどね。

――青森なんて、「りんごまるかじり条例」や「りんごを食べる日を定める条例」とかりんご関係が異様に多かったり。

長嶺氏■
そういう地域ごとの差は面白いです。

 また、みずすまし条例(滋賀県)、色抜き条例(和歌山市)、水源村宣言(群馬・桐生市)、市民あま水条例(千葉・市川市)など、水に関する独自ルールが目立つのは大きな発見でした。ニッポンは「水の国」なんでしょうね。

――条例を調べて行く上で住んでみたくなった市町村はありますか?

長嶺氏■
この条例があるから住みたい、っていう発想は新しいですね。アメリカだったら、たとえばマサチューセッツ州みたいに同性婚の制度があるからと、同性愛者が他州から移住したりすることはありますけど、あれは州法なので、条例よりむしろ法律に近い。

 日本の場合は地方が結婚制度をいじれるわけではないので、せめて地元で結婚したふたりに補助金を出すぐらいしか……。あ! そういった意味では補助金が多い町がいいです(笑)。

――各市町村の条例をどうピックアップしていたんでしょうか。

長嶺氏■
全国各自治体の例規集で、都合100万件以上のタイトルを私ひとりの目で全部確認し、必要に応じて、過去の新聞記事を調べ、話題や問題になっている条例を列挙していきました。あとはオーソドックスな条例ばかりにならないように珍しいのを思うがままに選んで行きましたね。「景観条例」なんて普通ですから。内容についても、私はまだ34歳の若造なので、自分の考えばかり書いてもあまり説得力はないと思って客観的なデータを優先しました。

――これからの条例の傾向などはどう予想されますか? 方言で地域をアピールするものが増えるのか、あるいは英語で国際色豊かにアピールするものが増えたりしていくんでしょうか。

長嶺氏■
やっぱり方言を前面に出すようなローカルルールは、住民に親しみや一体感を与えるような効果を演出できますので、強いでしょうね。ただ、「オラが街」をアピールする目的は二の次です。まずは、全国一律の法律でフォローできない部分を、地域の実情に合わせて繕う、仕立て直しする。それが条例の大切な役割だと思います。

 島根県出雲市の「21世紀出雲『神在月』文化振興条例」の前文に「Back To Basic」と書いてあったり、環境宣言を英訳してある自治体もあるにはありますけど、そういったグローバルな方針は国に任せるのがいいかもしれません。

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