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- 2025/06/09 掲載
今なお1.8兆円市場「フロッピーディスク」、産業界から「消えそうで消えない」理由3つ
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。
路面電車など…まだ現役「フロッピーディスク(FD)」
4月から5月にかけて、米東部ニュージャージー州ニューアーク空港で、2週間の間に2回もレーダーと無線通信の障害が発生した。さらには、西部コロラド州デンバー空港でも通信障害が起こった。幸い大事には至らなかったものの、米航空管制システムの一部がFDと1950年代のレーダーに依存しており、システム老朽化が原因であると報じられた。翻って、これら障害の直接の原因がFDの不具合、あるいはFDに起因する障害だと特定されていないことは注目される。その面において、FDの高い信頼性が示唆されている。
その証として、シリコンバレーのお膝元であるカリフォルニア州サンフランシスコ市の路面電車「ミュニ・メトロ」の自動列車制御システムには、5.25インチのFDが使われている。

セントラルサーバやローカルサーバ、列車搭載コンピューター、通信インフラ、ケーブル信号ワイヤーを動かす自動列車制御システム(ATCS)のソフトウェアは、FDから読み込んで起動する必要があるのだ。1998年に導入されたが、2030年まで現役で使用される予定だ。旧式とはいえ、問題なく機能している。
その事実を知らされた乗客のひとりであるケイティー・ギレン氏は、地元テレビ局KGOのインタビューに対し、「えっ、知らなかったです。AIに移行する時代だと思ってたけど、なんでまだフロッピーなんですかね」と話している。
FDが消えない「3つの理由」
米軍も、2019年6月まで、全米各地のサイロから核ミサイルを発射する際に利用されてきた戦略的自動指揮統制システム(SACCS)において、8インチFDを使用してきた。システム全体は古かったのだが、だからこそセキュリティを確保できた。当時の担当者が「IPアドレスのないものをハッキングすることはできないからだ」と話していたほどだ。
一方、日本でも、デジタル庁が推進する「デジタル原則」に基づく構造改革の一環で、記録媒体を指定する規制の見直しの動きが加速している。2024年には、行政手続きの記録媒体としてFD使用を求める規定の撤廃が完了したばかりだ。
ではなぜ現代においてもFDが現役なのか。その理由には大きく3つが考えられる。 【次ページ】FDが消えない「3つの理由」
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