- 2022/12/07 掲載
広がるインフレ手当=実質賃金減に対応、ベア前倒しも
歴史的な物価上昇に対応し、社員の生活を支援するため「インフレ手当」を支給する企業が増えつつある。基本給を底上げするベースアップ(ベア)を前倒しで実施する例も出てきた。賃上げが物価高騰に追い付かず、賃金の実質的な目減りで生活の負担感が増しており、社員の士気向上につなげる狙いがある。
厚生労働省が6日発表した10月の毎月勤労統計調査では、物価変動を反映した実質賃金が前年同月比2.6%減と、7年4カ月ぶりの減少幅を記録した。資源高や円安に伴い、電気・ガス代や食料品価格などが高騰し、名目賃金の上昇を打ち消している。連合は2023年春闘で、物価上昇分を反映させた賃上げ要求水準として「5%程度」を掲げて実現を目指す。
こうした中、家電量販店のノジマは12月、例年4月の給与改定を前倒しし、契約社員を含む約3000人を対象に2万円の賃上げを実施する。今年7月支給分の給与から導入している毎月1万円の「物価上昇応援手当」を基本給に組み込んだ上で、1万円を上積みする。
日本特殊陶業は11月、グループ会社を含む国内の従業員約8800人に「インフレ特別支給金」を出した。正社員は5万円で、契約社員やパート社員は2万円。同社は「従業員が安心して業務ができる環境づくりに取り組む」としている。
三菱ガス化学も11月、正社員や嘱託社員ら約1900人を対象に、1人当たり3万~6万円の一時金を支給。オリコンも10月から、アルバイトなどを含む約200人に対し、当面の終了時期を定めず月1万円の特別手当を支給している。
帝国データバンクが11月にインターネットで行った調査によると、物価高を受けて社員に手当を支給した企業は、支給予定も含めて12.3%だった。有効回答数は1248社。支給する予定のない企業は63.7%を占めた。労働組合からは一時的な手当よりもベアなどを求める声が出ており、年明けに本格化する23年春闘で、賃金改善の動きがどの程度広がるかが焦点となりそうだ。
【時事通信社】 〔写真説明〕賃金の実質的な目減りで生活の負担感は増している(イメージ写真)
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