- 2022/12/07 掲載
緩和を粘り強く続ける必要、物価高が賃金上昇伴わず=中村日銀委員
[松本市(長野県) 7日 ロイター] - 日銀の中村豊明審議委員は7日、長野県金融経済懇談会であいさつし、日本経済は依然として新型コロナウイルス感染症による落ち込みからの回復途上にあり、現在の物価上昇も賃金上昇を伴うものとなっていないことから「金融緩和を粘り強く続ける必要がある」と述べた。
実質国内総生産(GDP)はプラスを続けてきたものの、7―9月期には一転して前期比マイナス0.3%となった。中村委員は、実質GDPの水準は依然としてコロナ禍前の2019年平均を下回っていると指摘。マクロ的な需給ギャップもマイナスが継続しており、「供給力に対して需要不足が続く局面での金融政策の引き締めは、企業や家計の経済活動に大きな抑制圧力を掛け、デフレ経済に戻しかねない」と語った。
中村委員はまた、米欧の中央銀行が賃金上昇と物価高騰のスパイラルを阻止するために急速な利上げを継続しているのとは対照的に、日本では「賃金と物価のスパイラルが懸念される状況からは遠い」と話した。感染症からの回復途上で企業の取り組みを後押しし、賃上げに向けた環境を整備する観点からも、緩和的な金融政策の継続が必要だと述べた。
経済・物価のリスク要因としては、米欧中銀の急速な利上げの影響を挙げた。「累次の大幅利上げの影響の程度によっては、インフレ抑制と経済成長維持の両立が難しくなることが懸念される」と指摘。こうした懸念が高まれば「資産価格や為替相場の調整、新興国からの資本流出を通じて、国際金融資本市場が想定外にタイト化する可能性にも注意が必要だ」とした。
<賃金上昇へ、企業は「稼ぐ力」強化を>
中村委員は、日本経済は長らく「低成長・低インフレ・低賃金上昇」に陥ってきたと指摘。2%の物価目標を持続的・安定的に達成し、持続的な経済成長を実現する上では、経済成長とともに賃金も上昇していくことが重要だと語った。
また、企業に賃金水準の引き上げやデジタル人材の育成強化など「人への投資」の重要性が強く意識され、賃金の引き上げに向けた動きや従業員の能力開発強化の進展がみられており、「ようやく変革のステージへと変わりつつある」との見方を示した。企業は「『人への投資』の原資獲得のため、『稼ぐ力』を強化する経営戦略が重要になる」と語った。
(和田崇彦 編集:石田仁志)
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