- 2022/12/24 掲載
アングル:国内リスクに不安、中国富裕層が海外への投資強める
今年国内資産で大幅な損失を被ったこともあり、富裕層の間では、新型コロナウイルスを巡る混乱やロシアのウクライナ侵攻がもたらした地政学的な影響に苦しむ中国経済の先行き不透明感への懸念が広がっている。
実際、中国資産の想定リターンは全く振るわない。ユーリカヘッジのデータによると、広域中華圏向け投資を手がけるヘッジファンドの年初から11月末までのリターンはマイナス12.9%だった。
複数の資産運用担当者は、習近平国家主席が「共同富裕」のスローガンを掲げて格差是正を進めている点も富裕層の不安を誘っていると指摘し、彼らは米国や日本などの外国でプライベートエクイティ資産や不動産といった分野での投資機会を探っていると付け加えた。
中国本土から海外に資金が向かうというのは別に目新しい動きではない。ただこれまでは通常、富裕層のお金の大部分は海外上場の中国証券などの中国関連資産に流れていた。
ボストンに拠点を置くレイリアント・グローバル・アドバイザーズ創設者兼会長のジェーソン・スー氏は「以前なら、富裕層にとって富の創出は米国株や米国の不動産を買うことではなかった。それが変わりつつある」と話す。
スー氏は、レイリアント・グローバルには広域中華圏のファミリーオフィスから米国の経済政策や投資ルールを教えてほしいという問い合わせが多く寄せられていると明かした。
あるファミリーオフィス向けに香港で10億ドル(約1330億円)強の運用に従事しているポートフォリオマネジャーはロイターに、昨年末時点で80%だったポートフォリオの中国資産比率を既に33%程度まで引き下げ、さらに圧縮することを検討中だと述べた。
このポートフォリオマネジャーは、その代わりに日本や米国を中心とした海外のエネルギー・不動産セクター向けや、ベンチャーキャピタル向けの投資を拡大している。
別の中国のファミリーオフィス(資産10億ドル強)のマネジングパートナーは、中国の経済活動本格再開に絡むチャンスを見逃さないように目配りしつつ、日本と米国における資産運用担当者の行動と投資機会の研究に「多大な時間」を費やしていると説明した。
<米運用業界と接点>
中国富裕層の海外資産投資意欲の強さを反映するように、香港の米国領事館が10月と11月に広域中華圏のファミリーオフィスと米国の資産運用業界をつなぐ会合を開いたことが分かった。送付された電子メールをロイターが確認した。事情に詳しい2人の関係者にも取材した。
11月の会合には、ヘッジファンド運用会社グリーンライト・キャピタル創設者でリーマン・ブラザーズの空売りで一躍脚光を浴びたデービッド・アインホーン氏や、グーグルのシュミット元最高経営責任者(CEO)のファミリーオフィスを運営するケン・ゴールドマン氏らが招待された。
米領事館はロイターの取材に対して、幅広い聴衆を対象とした米国の投資・経済情勢説明会をしばしば開催していると回答。ゴールドマン氏は会合に出席したと認め、アインホーン氏はロイターの問い合わせに返答していない。
UBSグローバル・ウエルス・マネジメント・チーフ・インベストメント・オフィスの広域中華圏責任者エバ・リー氏は、中国富裕層は過去数年間に国内市場で大金を稼いだかもしれないが、今はそのやり方が常に機能するわけでないと認識していると指摘した。
リー氏は「投資家は今年1つの教訓を学んだ。分散投資こそが重要なのだと」と付け加えた。
(Xie Yu記者、Summer Zhen記者)
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