- 2023/03/11 掲載
NY市場サマリー(10日)株続落、ドル下落 利回り急低下
<為替> ドルが下落した。2月の米雇用統計が賃金の伸び鈍化を示したことを受け、インフレ圧力が緩和し米連邦準備理事会(FRB)の利上げペースが緩やかになるとの見方が広がった。
米労働省が10日発表した2月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は31万1000人増加し、市場予想を上回る伸びとなり、雇用の堅調さを改めて示した。同時に、失業率は上昇し、賃金の前月比伸び率が鈍化するなど、労働市場が軟化しつつある兆候も示唆し、FRBが月内の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ幅を0.5%ポイントに拡大するという観測が後退した。
ドル指数は0.618%安。ただ対カナダドルではほぼ横ばいだった。
米カリフォルニア州の銀行規制当局が10日、米金融持ち株会社SVBファイナンシャル・グループ傘下のシリコンバレー銀行を閉鎖したことを受け、米債利回りの低下に拍車がかかった。
ウィズダムツリーの債券戦略責任者、ケビン・フラナガン氏は、安全資産に多額の資金が流れているとし、「銀行部門への潜在的なストレスに対する懸念がある」と述べた。
コンベラのシニアマーケットアナリスト、ジョー・ マニンボ氏は、FRBの物価目標2%へのインフレ回帰の道のりは平坦ではないため、ドルはレンジ相場になりそうだと指摘。「市場がターミナルレート(政策金利の最終到達点)予想を引き上げたとき、ドルは2段階上昇するだろうが、それが一段落すればドルは一歩後退する」とし、「市場はすでにFRBの利上げが年内に停止することを見込んでいるが、それがいつになるかは分からない」と語った。
CMEグループのフェドウォッチによると、次回のFOMCで0.50%の利上げが決定される確率は41%。1週間前は71.6%だった。
SLCマネジメントの投資戦略・資産ロケーション担当マネジングディレクター、デック・マラーキー氏は、市場は次回のFOMCで0.50%ポイントの利上げが行われるとの見通しに先走っていたと言及。「現時点で0.25%ポイントの利上げは理にかなっている。FRBが引き締めを続けながらも経済指標が追いつくまで引き締め期間を延長することができるためだ」とした。
ユーロ/ドルは0.57%高の1.064ドル、ポンド/ドルは0.83%高の1.2024ドル。
RBCグローバル・アセット・マネジメントのブルーベイ米債チーム責任者、アンドレイ・スキバ氏は3月14日に発表される消費者物価指数(CPI)が「極めて重要」とし、「焦点は現在、CPIと、米銀部門で起きていることを考慮した全体的な金融情勢に移っている」とした。
日本円は対ドルで1.01%高の134.79円。
ただ、序盤のドル/円は急伸。日銀が9―10日に開いた金融政策決定会合で金融政策の現状維持を全員一致で決めたことを受けた。
NY外為市場:[USD/J]
<債券> 米雇用統計を受け国債利回りが全体的に大きく低下し、中でも2年債利回りの過去2日間の低下幅は2008年の世界金融危機以来の大きさとなった。市場では米シリコンバレー銀行の破綻を受けリスク選好度が一段と低下している。
マニュライフ・インベストメント・マネジメント(モントリオール)のチーフエコノミスト兼ストラテジスト、フランシス・ドナルド氏は「今週発表された他の労働市場関連の指標も踏まえると、労働市場は冷え込みつつあるものの、連邦準備理事会(FRB)にとってまだ十分ではないことが分かった」と指摘。
「今回の雇用統計は『過熱』はしていないが『暖かい』ものだったとわれわれは見ている。今月の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%ポイントの利上げが決定されるとの予想を固めるには十分だったが、失業率の上昇と賃金の伸びの鈍化を踏まえると、0.50%ポイントの利上げの必要性に対する圧力は弱まった」と述べた。
10年債利回りは22.6ベーシスポイント(bp)低下の3.697%。一日の低下としては昨年11月10日以来の大きさとなる。
国債利回りの急低下は9日に始まっていたが、この日は米金融持ち株会社SVBファイナンシャル・グループ傘下のシリコンバレー銀行の破綻による影響が広がった。市場関係者は「銀行システムに明らかに亀裂が入っている。FRBが今月の会合で0.50%ポイントの利上げを決定すれば、銀行システムの何かが壊れるのではないかとの懸念が出ている。このため市場は神経質になっている」としている。
金利見通しを反映しやすい2年債利回りは30.3bp低下の4.597%。2年債利回りは今週に入り07年以来初めて5%台に乗せたが、過去2日間の下げは約45bpと、08年9月の金融危機以来の大きさとなった。
30年債利回りは17.2bp低下の3.698%。1日の低下幅としては昨年12月1日以来最大となる。
2年債と10年債の利回り格差はマイナス90.4bp。
米金融・債券市場:[US/BJ]
<株式> 続落。主要株価3指数は軒並み1%超安となった。強弱入り混じる2月の米雇用統計を受け、米連邦準備理事会(FRB)が月内の会合で0.5%ポイント利上げを実施するという観測が後退する一方、米シリコンバレー銀行破綻のニュースが米銀の健全性を巡る懸念をあおった。
BMOファミリー・オフィスの最高投資責任者(CIO)、キャロル・シュライフ氏は「FRBの積極的な利上げの結果、金融システムに亀裂が生じる可能性が懸念されている」とし、影響が経済のより幅広い分野に波及するかが懸念材料と述べた。さらに「市場参加者はかなり神経質になっている」と指摘した。
KBW地方銀行株指数は2.4%安、S&P総合500種の金融は1.8%安。
シリコンバレー銀のニュースを受け、注目されていた雇用統計の結果は幾分影を潜めた。
パレオ・レオンのマネージングディレクター兼共同CIO、ジョン・プラビーン氏は「銀行システムを巡る不確実性に注目が集まった」と指摘。「雇用統計が示したポジティブなトーンは、シリコンバレー銀破綻を巡るネガティブな情報に相殺された」と述べた。
S&Pの主要11セクター全てが下落した。不動産が3.3%安で下げを主導。一般消費財は0.5%安の小幅な下げにとどまった。
週足ではS&Pが4.6%安で、昨年9月以来最大の下げを記録。ただ、年初来では0.6%高と、辛うじて上げを維持した。ダウ工業株30種は今週4.4%、ナスダックも4.7%それぞれ下落。年初来では、ダウは3%超、ナスダックは6%超値下がりしている。
シカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(恐怖指数、VIX)は3カ月ぶりの高値となる24.9で終了。一時約5カ月ぶりの高値を付ける場面もあった。
S&Pの銀行株指数は0.5%安。JPモルガン・チェー スが2.5%、ウェルズ・ファーゴが0.6%それぞれ上昇したことが下支えた。
下げが目立ったのはシグネチャー・バンクで22.9%安、ファースト・リパブリックも14.8%安。
衣料品小売大手ギャップは6.3%安。第4・四半期決算は赤字が市場予想以上に膨らんだほか、通年の売上高見通しはアナリスト予想を下回った。
ソフトウエア大手オラクルも3%安。2022年12月─23年2月決算は総売上高が18%増の123億9000万ドルとなったものの、市場予想を小幅下回った。
ニューヨーク証券取引所では値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を4.75対1の比率で上回った。ナスダックでも4.31対1で値下がり銘柄数が多かった。
米取引所の合算出来高は151億7000万株。直近20営業日の平均は111億3000万株。
米国株式市場:[.NJP]
<金先物> 続伸した。米雇用統計発表後の金利、ドル指数の低下に加え、米地方銀行閉鎖の報が安全資産とされる金への資金流入を促した。中心限月4月物の清算値(終値に相当)は前日比32.60ドル(1.78%)高の1オンス=1867.20ドル。週間では0.68%上昇した。
NY貴金属:[GOL/XJ]
<米原油先物> 4日ぶりに反発した。米国産標準油種WTIの中心限月4月物の清算値(終値に相当)は前日比0.96ドル(1.27%)高の1バレル=76.68ドル。週間では3.77%安となった。5月物は0.94ドル高の76.78ドルだった。
NYMEXエネルギー:[CR/USJ]
ドル/円 NY終値 134.98/135.01
始値 136.75
高値 136.87
安値 134.12
ユーロ/ドル NY終値 1.0643/1.0645
始値 1.0588
高値 1.07
安値 1.0581
米東部時間
30年債(指標銘柄) 17時05分 98*14.00 3.7118%
前営業日終値 95*21.50 3.8700%
10年債(指標銘柄) 17時05分 98*10.00 3.7045%
前営業日終値 96*17.50 3.9230%
5年債(指標銘柄) 17時05分 100*04.25 3.9700%
前営業日終値 99*00.75 4.2200%
2年債(指標銘柄) 17時05分 100*01.88 4.5925%
前営業日終値 99*15.63 4.9000%
終値 前日比 %
ダウ工業株30種 31909.64 -345.22 -1.07
前営業日終値 32254.86
ナスダック総合 11138.89 -199.47 -1.76
前営業日終値 11338.36
S&P総合500種 3861.59 -56.73 -1.45
前営業日終値 3918.32
COMEX金 4月限 1867.2 +32.6
前営業日終値 1834.6
COMEX銀 5月限 2050.6 +34.1
前営業日終値 2016.5
北海ブレント 5月限 82.78 +1.19
前営業日終値 81.59
米WTI先物 4月限 76.68 +0.96
前営業日終値 75.72
CRB商品指数 264.9930 +0.3392
前営業日終値 264.6538
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