- 2023/04/12 掲載
政府・日銀、共同声明見直し封印=景気、賃上げ腰折れ回避―「政治配慮」との声も
政府と日銀は、2%の物価上昇目標を明記した2013年の共同声明について、当面見直しを封印する。岸田文雄首相と植田和男日銀総裁が10日の初会談で「直ちに見直す必要はない」との認識で一致した。欧米発の金融不安や景気減速が懸念される中、賃上げを伴う物価の安定的な上昇を確実にする狙いとみられるが、市場では「政治への配慮」があったとの見方も出ている。
「政府・日銀が共同声明にのっとって、適切な施策を行ってきた結果、デフレでない状態をつくり出している」。植田総裁は10日、就任後初の首相との会談後、記者団にこう強調した。首相と植田総裁は、デフレ脱却と持続的な経済成長に向けた連携強化を定めた共同声明の「考え方は適切である」として、政府・日銀の緊密な連携を確認した。
共同声明を巡っては、産学の有識者らで構成する「令和国民会議(令和臨調)」が1月、政策効果の検証と「長期的な目標」への変更を提言。共同声明の下で日銀が大量に国債を購入して金利を低く抑えてきたことが、財政規律を弛緩(しかん)させ経済の新陳代謝を遅らせたと批判した。政府内の一部でも検証と見直しの必要性を指摘する声が聞かれた。
だが、3月上旬の日銀金融政策決定会合では、賃上げを通じた物価目標の実現へ環境が変化しつつある中、共同声明の見直しに慎重な声が出され、政府側もこれに足並みをそろえた。
今回、共同声明見直しを見送った理由に関し、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、金融不安や景気下振れリスクへの警戒のほか「金融緩和の修正に強く反対する自民党保守派への配慮」もあると指摘。「植田総裁の最大の弱点は政治との交渉力」とし、今後政治的な要因で金融政策修正の判断が遅れるリスクを警戒する。
令和臨調の緊急提言の策定に携わった津田塾大の伊藤由希子教授は「共同声明を見直すか見直さないかという形式にこだわる必要はないが、この10年の政策効果の検証と説明責任は果たすべきだ」と語った。
【時事通信社】 〔写真説明〕辞令交付後、握手する日銀の植田和男総裁(左)と岸田文雄首相=10日、首相官邸
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