• 2023/04/15 掲載

アングル:プレミアム・シフト目立つ米航空各社、景気後退に先手

ロイター

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[シカゴ 12日 ロイター] - 米デルタ航空は景気悪化に対する守りを固めるため、より収益性の高いプレミアムシートを倍増させる計画だ。

エド・バスティアン最高経営責任者(CEO)はロイターに対し、今年の夏から全ての航空機にプレミアムシートを設置すると語った。現在、デルタ航空が保有する航空機の約2%を占める座席数50の航空機のうち、数十機にはプレミアムシートが設置されていない。

同社は今年、路線網全体でプレミアムシートを新型コロナウイルスのパンデミック前に比べ1日当たり1万5000席増やす。同社は13日に四半期決算を発表する。

バスティアン氏によると、デルタ航空は座席料金プラスアルファの支出をいとわない旅行者を引き付け、増益につなげたい考えだ。

「価格だけで勝負するような『コモディティーのわな』からも脱することができる」という。

同社は、プレミアムシートに殺到している裕福なレジャー客の消費は、どんな景気悪化局面でも影響を受けにくいと踏んでいる。グレン・ハウエンシュタイン社長は昨年12月、企業顧客の予約が減った際にプレミアムシートは「素晴らしいショック吸収役」を果たしてくれると述べていた。

ライバルのユナイテッド航空とアメリカン航空も、プレミアムシートによる収入を追求している。ユナイテッドは、2026年までに北米で1便当たり53席のプレミアムシートを確保する見込み。19年に比べ75%増えることになる。アメリカンは、26年までに長距離便のプレミアムシートを45%増やす計画だ。

アメリカン航空のバス・ラジャ最高商業責任者は「航空旅行だけでなく旅行全体が、国内総生産(GDP)対比で伸びてはいないにせよ、横ばいを保っている」と説明。「世界が高インフレに見舞われていることを考えれば、見事なものだ」と述べた。

アメリカンとユナイテッドは、売上高に占めるプレミアムシートのシェアを公表していない。デルタ航空ではこの割合が38%と、パンデミック前より3%ポイント上昇した。

バスティアン氏によると、デルタ航空の売上高に占めるプレミアムシートの割合は今後数年間、毎年1─2%ポイントずつ増加する見込みだ。

同社便の座席に占めるプレミアムシートの割合は来年に30%と、2019年から2%ポイント増える。プレミアムシートが約35%を占めるボーイングMAX737─10型機の納入が25年から始まると、この割合はさらに高まる見通しだ。

この裏返しとして低料金のベーシック・エコノミー席は減少しており、今ではデルタ便の座席の5%に満たない。こうした変化によってデルタは今後、クレジットカード手数料、手荷物預かり料、足元の追加スペース提供料など、航空券以外の収入源を通じた収益拡大の道が開ける。

デルタは来年、売上高の60%以上を高級シートと航空券以外の収入が占めると予想している。パンデミック前にはこの割合が53%だった。

プレミアムシートは座席が通常よりも快適で、空港や機内でより良いサービスが提供される。料金は場合によっては通常のエコノミー運賃の2倍と高い。アナリストによると、航空会社にとっての収益性は通常座席の7倍に達することもある。

バスティアン氏によると、デルタのプレミアムシートはパンデミック以降、収益の伸びが低価格座席を上回っている。需要も安定しており、3分の2以上の顧客がプレミアムシートの再購入の意向を示していることが、同社のデータで明らかだ。

プレミアムシート拡大戦略の成否は、定刻通りの運航を行えるかどうかにかかっていると、元航空会社幹部で現在はコンサルティング会社を経営するロバート・マン氏は指摘。「リトマス試験紙のようなものだ」と語った。

航空各社は昨夏、フライトの欠航や遅延が相次いで顧客を混乱させ、デルタは年末まで便数を制限せざるを得なかった。

ただ、コンサルタント会社のデータによると、デルタはそれでも昨年を通じ、米航空会社の中で最も正確な運航を行った。

バスティアン氏は、そうした実績を積み上げたいと表明。「プレミアムな商品を作っても、お客様が遅延や欠航に見舞われるようでは意味がない」と述べた。

<旅行形態に変化>

各社がプレミアム収入を追求している背景には、パンデミック後の旅行形態の変化がある。

航空各社幹部によると、ハイブリッド勤務の導入によってビジネスとレジャーを組み合わせた旅行が可能になり、可処分所得が多い顧客は旅行を増やせるようになった。

ユナイテッド航空のスコット・カービーCEOは昨年末、ハイブリッド勤務によって全ての週末が「ホリデー・ウィークエンド」になる、と語っていた。

こうした変化の影響で、以前は法人が予約していた利益率の高い座席も、今は別の顧客で埋まっている。業界関係者や専門家は、この傾向は持続的なものであり、航空事業の浮き沈みを軽減する上で役立つと見ている。

アメリカン航空の場合、現在は売上高の半分近くをビジネスとレジャーを組み合わせた旅行客から得ている。同社によると、こうした旅行者はまた、一般的なビジネス顧客よりも40%多く消費する傾向がある。

業界団体のエアラインズ・フォー・アメリカによると、パンデミック以前は、米国の主要航空会社の旅客収入の最大50%を出張が占めていた。

OAGのシニアアナリスト、ジョン・グラント氏は「旅行や休暇はまさに『必需品』になった」と述懐した。

(Rajesh Kumar Singh記者)

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