- 2023/05/29 掲載
焦点:米債務上限引き上げ合意、出遅れ株に恩恵か 国債変動に警戒も
EミニS&P500先物は28日夜の取引で0.5%上昇した。
ただ一部投資家は、歳出削減案が米国の成長を圧迫する可能性があると警戒。デフォルト(債務不履行)を辛うじて回避した交渉過程は格付け面での米国の立場を弱体化させる恐れもある。
キリバの市場戦略グローバル責任者、ボブ・スターク氏は「合意は朗報だが、米政府には依然としてキャッシュフローの問題があり、決着には時間が鍵となる」と指摘。「合意は政府を流動性不足の瀬戸際から救う第一歩に過ぎない」と語った。
合意への楽観的な見方と人工知能(AI)関連株の大幅高により、26日のS&P総合500種は2022年8月以来の高値水準で引けた。今年に入ってからは9.5%高となっている。
LPLフィナンシャルのチーフグローバルストラテジスト、クインシー・クロスビー氏は、合意の恩恵を受けそうなセクターとして防衛関連株や景気敏感株、エネルギー株などに言及。「合意が市場をプラス圏に保ってきた巨大テックだけでなく、より広い市場を下支えすると期待している」と語った。
シティの株式取引戦略責任者であるスチュアート・カイザー氏は、小型株など今年出遅れているセクターにとってはより大きな後押しになり得ると指摘。一方で「歳出削減が国内総生産(GDP)にどれだけの影響を与えるだろうか」と語り、幅広い米国経済への影響にも警戒している。
投資家はまた、米国債のボラティリティーの可能性を警戒。債務上限が引き上げられると、財務省はすぐさま債券を発行すると予想され、市場から数千億ドルのキャッシュが吸い上げられる可能性があるためだ。
バレンジョーイ(シドニー)のマクロストラテジスト、ダミアン・ボーイ氏は「合意が成立し、本当の危機が回避されたという楽観論と、恐ろしい流動性の吸収が同時に起こる」と想定。「金利のボラティリティー(変動率)が上昇し、銀行や非AI成長株が出遅れそうだ」と話した。
(Laura Matthews記者、Chibuike Oguh記者)
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