- 2023/05/29 掲載
アングル:日本株は高値圏の攻防、海外勢と個人で真逆のポジション
<売りにかける個人、割安感に着目の海外勢>
指数の変動率が日経平均の変動率のマイナス2倍となるNEXT FUNDS日経平均ダブルインバースETF。その受益権口数が、1月4日の4.2億口から、26日には10億口超へと倍以上に膨らんだ。同ETFの信用倍率は年初に2倍程度だったが、足元では昨年9月の株安局面以来の高水準となる23倍に高まった。
主な投資家とみられているのが、逆張りスタンスで知られる個人投資家だ。金融不安の高まった3月第3週―第4週に1.2兆円買い越したが、その後の株価反発局面の8週間で累計2.6兆円売り越している。
日本株はバブル後高値を更新するなど好調さをキープしているが、過去2年間のレンジを上抜け33年ぶり高値となったことで「いずれ株価は下落してレンジに回帰するとの思惑や、海外のリスク要因などを背景に、株価の下落にかけるポジションを積み上げている」(松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリスト)とみられる。
一方、日本株を押し上げたのが海外勢の買いだ。直近の7週連続で買い越しており、その累計は5.5兆円を上回る。平均では1週あたり7985億円の買い越しで、2017年10月第4週までの7週間の7591億円を上回った。
海外勢は先物だけでなく現物株も大きく買い越しており「米著名投資家バフェット氏の日本株選好発言などをきっかけに、相対的な割安感に注目した買いが入っている」(国内証券のストラテジスト)との見方が多い。
日経平均は円ベースではバブル後高値を更新したが、ドル建てのバブル後高値には距離があり「海外勢の目からはまだ上値余地がありそうだ」(証券ジャパンの大谷正之調査情報部部長)との声もある。
<高値波乱への警戒も>
市場が警戒するのは、積み上がったポジションの反動だ。ダブルインバースETFでは、投資家が購入する際に運用会社が日経平均先物を売り、売却時に買い戻す。市場では「海外勢の買いが継続すれば、個人が損切りに動いて先物買いが誘発され、踏み上げになりそうだ」(国内証券のストラテジスト)との見方がある。
一方、海外勢は「米債務上限問題でデフォルト警戒がある中でヘッジで日本株を買う動きがあった。解決すれば日本株を買う必要がなくなり、利益確定売りが出てもおかしくなく、海外投資家の買い越しが途切れるリスクがある」(みずほ証券の三浦豊シニアテクニカルアナリスト)という。
海外投資家は、金融不安が高まった今年3月第3週─第5週に3.1兆円売り越していた。足元の買い越し累計はこの倍近い水準となっており、市場では「買い戻しは一巡し、オーバーシュート気味」(別の国内証券のアナリスト)との指摘もある。
日経平均は5月の直近約1カ月だけで約3000円上昇し、200日移動平均線からの乖離率も10%を超えている。過熱感が強まっているのは確かで、「高値波乱」を警戒する声も聞かれる。
(平田紀之 編集:伊賀大記)
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