- 2023/06/09 掲載
アングル:米新学期を控えた消費喚起に期待、準備進める小売各社
全米小売業協会(NRF)によると、新学期開始を控えた文具などの消費は2015年以降、順調に伸びている。
メーシーズ、ラルフローレン、ノードストロムなど各社の幹部は、ここ2週間の決算発表で、生活必需品の消費は続いているが、根強いインフレが続いていることから選別的に支出しているとの見方を示した。
ウォルマートのダグ・マクミロン最高経営責任者(CEO)は2日の年次株主総会で、ノートや筆記具など新学期用品を今年はより「オープン価格」で展開すると述べた。
新学期に向けた支出で以前は衣料品やスニーカーの占める割合が高かったがフットロッカーは5月19日、スニーカー需要の喚起へ割引での販売を促進すると明らかにした。
物価上昇の激しい英国では、マークス&スペンサーが学校の制服価格を3年連続で据え置いた。また、早期購入者向けに制服の20%割引キャンペーンを展開している。
小売業にとっての課題は、物価が高騰するなか衣料品や靴などにどの程度支出されるか。米国のデータによると、必需品以外の一般消費財の購入は1月以降減少している。ジェーン・ハリ&アソシエイツのシニア・リサーチ・アナリスト、ジェシカ・ラミレス氏は、小売業は「不安定な時期」を迎えていると指摘する。
格付け会社のムーディーズは5月下旬、世界の小売・アパレル企業の今年の営業利益の伸びは「ごく低水準でばらつきがある」とし、昨年は13%減だった北米での営業利益は6.2%増になると予測した。
ウォルマートやターゲットなどの小売大手は、サプライヤーとのコスト交渉が可能なため、生産コスト低下の恩恵を受けられるとムーディーズは指摘している。
ムーディーズによると、TJマックスのようなディスカウント店は節約を求める消費者急増の恩恵を受ける可能性があるが、1ドルショップなどは中核となる低所得者層の可処分所得減少により打撃を受けそうだ。
ヴィクトリアズ・シークレットのマーティン・ウォーターズCEOは、苦戦しているブランドPINKの全面的な見直し計画を明らかにした。ヴィクトリアズ・シークレットと百貨店のメイシーズ(売れ残った在庫を整理するためのプロモーションも計画している)は、年収10万ー15万ドル以下の消費者層への圧力を指摘した。
アバクロンビー&フィッチ、アメリカン・イーグル、アーバン・アウトフィッターズ、コールズの幹部は決算説明会で、親からの支出を期待して新しいスタイル、特にアクティブウェア、ドレス、デニム以外のボトムスに力を入れていると語った。
アバクロンビー&フィッチのフラン・ホロウィッツCEOは、カーゴパンツ、オフィスでも着用できるドレスアップしたデニム、テーラードパンツなどがミレニアル世代に好調と指摘。4月末までの四半期の売上高が7%減少したティーン向けのホリスターは、新学期のショッピングシーズンを前にショッピングモールの小売店舗で同様のスタイルを追加している。
若年層はは可処分所得が少ないことが多い。アメリカン・イーグルは10代向けのブランドだが、128ドルのジーンズなどプレミアム・デニムを立ち上げ、上の世代にもアピールしようとしている。
全体として売上を伸ばしたチェーンでも、10代向けのブランドでは最近赤字が目立つという。これにはアバクロのホリスターブランドやアーバンアウトフィッターズが含まれる。アーバンアウトフィッターズの親会社URBNは、第1四半期にアンソロポロジーとフリーピープルのブランドで強い伸びを示した。URBNによると、マクロ経済環境が若年の消費者層に大きな影響を与えている。
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