- 2023/06/10 掲載
アングル:K・カーダシアンも参入のPE業界、金利上昇で苦戦
昨年、自身のファンドを立ち上げたカーダシアンさんは、ボディーガードに囲まれて登場。投資の秘訣を学びたいと語り、PE幹部数百人の熱視線を集めた。
スキンケア商品から下着まで、幅広い事業を手がけるカーダシアンさん。新設のファンドはまだ、投資を開始していないが、未公開企業の創業者らが持つ「魔法のソース」を知りたい、と話した。
しかし、PEは今、業界が成熟した1980年代以来で最も厳しい時期のひとつを迎えている。インフレ退治のための急激な利上げにより、業界の要である借り入れの源泉が枯渇し、コストも上がっているからだ。
10年以上続いた超低金利時代のおかげで、PE投資家はこれまで多額の資金を借りて企業を買い漁り、他の投資家に転売してきた。それらの投資家もまた、低コストの融資をてこに活発に買収を行った。
しかし、現在は欧州中央銀行(ECB)が25年の歴史の中で最も積極的な利上げを行ったことで、銀行が与信を絞っていることがユーロ圏のデータから読み取れる。
リフィニティブのデータを見ると、欧州ではPEの支援を受けた企業買収・合併(M&A)が1─5月に約460億ドルと、前年同期比で74%も減った。
世界のM&Aの大半を占めるのはハイテクセクターで、ヘルスケア関連も160億ドルに達している。
スーパーリターンに参加したインベストコープの欧州PEグループ責任者、ジョゼ・ファイファー氏は「以前はもっと簡単だったが、今では案件が大幅に減った。もっと一生懸命やらなければならない」と語った。
手続きに時間がかかったり、未遂に終わったりする例が増えたことが、M&A減少の主な原因だ。
最近では、ドイツのサッカーリーグが第1部ブンデスリーガの放映権の株式を売却しようとしたものの、所属サッカークラブが拒否権を行使したため断念した。
ただ、欧州では企業が事業内容を整理したり、非中核的資産を売却したりする動きが一部にあり、M&Aに寄与している。
カーライルの欧州PE共同責任者、マルコ・デ・ベネデッティ氏は「欧州は予想以上に健闘している。事業分離の動きにチャンスがありそうだ」と語った。
この厳しい環境下で果敢に事業売却に挑む企業もあるが、以前より秘密主義になり、入札を減らしたり、買い手に明確な期日を示さなかったりするようになった。
ティケオー・キャピタルのPE責任者、エマニュエル・レリエ氏は、このため競争の度合いを読み取るのが難しくなったと語る。もっとも、M&Aのプロセスは以前より柔軟化しており、例えば、少数株式の売却や、買収した企業をより長期にわたって保有し続けるといった例がみられるという。
EQTのクリスチャン・シンディグCEOは、こうした変化により、PEが企業を以前より長い期間保有して育て上げるという新たな構造が生まれるかもしれないと語った。
(Emma-Victoria Farr記者)
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