- 2023/06/22 掲載
アングル:米市場で株式追加売り出し増加、IPO市場復活に期待広がる
LSEGディールズ・インテリジェンスによると、4月末からこれまでに米国で実施された株式の追加売り出し規模は280億ドル超と、前年同期の73億ドルを大幅に上回った。
追加売り出しもIPOも投資家の需要の強さを当てにするという面では変わらないので、IPO市場にとって幸先が良い、と複数のバンカーは話す。
バンク・オブ・アメリカの株式資本市場米州シンジケート責任者ダニエル・バートン・モーガン氏は「歴史的に見ると、このような追加売り出しの規模はIPO市場の活性化につながるはずだ」と述べた。
IPO市場は昨年初め以降ずっと地合いが弱い。ロシアのウクライナ侵攻や、物価高で投資家が米連邦準備理事会(FRB)の急激な利上げを警戒し、市場のボラティリティーが高まったことが原因だ。ディールロジックのデータからは、特別買収目的会社(SPAC)を除く昨年のIPOによる世界全体の資金調達額は1540億ドルと、前年比65%も減少したことが分かる。
ただFRBの利上げは年内に打ち止めになると予想され、ボラティリティーは落ち着いてきた。投資家の不安心理の度合いを示すボラティリティー・インデックス(VIX)は4─6月のほとんどの期間、これを超えればIPO実施には逆風が強すぎるとみなされる20を下回って推移。現在は2020年2月以来の低水準にある。
ゴールドマン・サックス・グループが、IPOにとってマクロ経済環境がどの程度プラスになっているかの目安として算出している「IPO発行バロメーター」も、昨年3月以降で最も高い水準だ。同社アナリストチームは顧客向けノートに「株価の安定が主にバロメーターの改善をけん引している」と記した。
こうした中で今月5日からの週には、米国で19件の株式追加売り出しが行われ、調達総額は66億ドルと週間ベースとしては21年末以降で最大級の規模に達した。例えばインテルは、イスラエルの自動運転技術開発会社モービルアイ・グローバルの株式の一部(160億ドル相当)を売却。ゼネラル・エレクトリック(GE)は、保有する20億ドル相当のGEヘルスケア・テクノロジーズ株を売り出した。
そして伝統的に市場の夏枯れ時期が終わる9月をにらみ、ソフトバンクグループ傘下の英半導体設計大手アーム・ホールディングスなど幾つかの有力企業がIPOの準備を進めている。もちろん正確な実施時期が市場環境に左右されるのは言うまでもない。
先週には地中海料理レストランチェーンを運営するカバ・グループがIPOに踏み切り、株価は一時公開価格の2倍に跳ね上がった。公開価格自体も、何度か上方修正された仮条件レンジの上限より高く決まった。
資本市場で助言サービスを手がけるブルーシャート・グループの創業者兼マネジングディレクター、アレックス・ウェリンズ氏は「(カバのIPOは)消費関連や他のセクターで市場の瀬踏みを考えているさまざまな企業にとって非常に意味のあるシグナルになる可能性がある」と指摘。法律事務所キング・アンド・スパルディングの資本市場担当弁護士キース・タウンゼント氏は「私から見ればあらゆる点で(カバのIPOは)大成功だった。これが他社に相当な自信を与えると思う」と話した。
(Echo Wang記者 Lance Tupper記者)
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